特集 全国テキスタイル産地Ⅰ(5)/多種多様な取り組みで/篠原テキスタイル/ショーワ/荻野製織/小橋/ワン・エニー/菱友商事
2025年07月30日 (水曜日)
〈福山デニム知名度向上へ/篠原テキスタイル〉
篠原テキスタイル(広島県福山市)は、受託生産、自販ともに生産が堅調に推移している。
シャトル織機で織るセルビッヂデニムは「1年先まで埋まっている」(篠原由起社長)ほか、ダブル幅のデニムも生産が好調だ。別注生地の開発が増えているといい、「差別化した生地が欲しいニーズが高まっている」とする。
同社は近年、地場産業であるデニムの知名度アップに向けた取り組みにも力を入れている。今年は地元の福山市立駅家西小学校でデニムに関する授業を開いている。5月に1年生と綿花を植えたほか、6月には2年生の工場見学を受け入れた。
このほか、市内の小学校へ来春入学予定の子供たちにデニム製のバッグを配布する取り組みも進めている。
〈柄物生地を再提案/ショーワ〉
ショーワ(岡山県倉敷市)は上半期(2024年12月~25年5月)、売上高が前期比微増で推移した。シャトル織機で織るセルビッヂデニムの受注が好調で、「この需要が(売り上げを)押し上げた」(高杉哲朗統括本部長)。このほか、カシミヤ使いなど「付加価値の高い生地の引き合いが多い」と言う。
下半期はチェックやストライプといった特徴のある柄物生地を改めて再提案する。今年開いた単独展で好評だった、硫化染料を用いた綛(かせ)染めのセルビッヂデニムも引き続き訴求する。
同社は岡山県産業振興財団(岡山市)が進める24年度の中堅支援事業に採択され、過去の販売データに基づいたデータ分析などを進めてきた。今年はさらに深掘りしながら、業務の改善に生かしていく。
〈産地またいだ生地開発推進/荻野製織〉
荻野製織(岡山県倉敷市)は、販路の拡大や顧客のリピート率の高さなどから、2025年6月期の売上高は前期並みを維持した。
同社はさまざまな産地企業と協力した、帆布を中心としたモノ作りが強みだ。柔道着メーカーの九櫻(くさくら、大阪府柏原市)と開発した、パラフィン加工を付与した綿100%の一重刺し子生地や、拠点を置く児島の工場のシャトル織機で織った「USビンテージダック」、広島県尾道産の柿を使った柿渋染めなど、差別化した生地を開発してきた。
22年のプレ展を皮切りに、毎年東京と大阪で単独展を開くなど発信も強めている。今年も5月に東京と大阪で開き、生地をPRした。荻野尚也社長は「今期もさまざまな所にアンテナを張り、顧客を巻き込みながら売り上げにつなげていきたい」と話す。
〈見える化で業務改善/小橋〉
小橋(岡山県倉敷市)は業務の見える化など、業務改善を進めている。システムの導入で、各顧客の受注から出荷までの状況が確認できるようになった。小橋俊治社長は「納期などに関して、すぐに答えられるようになった」と話す。システムは改善しながらさらなる精度向上を目指す。
コストの上昇に加え、仕事量が落ちていることが響き、2025年5月期は減収、最終赤字となった。「4月ごろから仕事が少し膨らんできた」とするが、今後の受注見通しには不透明感が漂う。
今期は従業員との報連相(報告・連絡・相談)を密にしながら、業務に取り組む。小橋社長は同社について「使い勝手の良い工場とよく言われる」と説明する。ダブルツイスター40台、合糸機14台を持つ強みを生かし、受注獲得につなげる。
〈独創的な生地企画に強み/ワン・エニー〉
ワン・エニー(岡山市)は、1940年代に米国陸軍が採用したチノパン、「41カーキ」の色をオーガニックの茶綿や緑綿をブレンドして紡績した糸で表現した「トゥルーオーガニックコットン」や、海島綿使いのデニムなど、独創的な生地の企画で顧客の獲得につなげている。
近年は海外での開拓にも力を入れており、現在は売上高に占める海外比率が8割を占めるまでになった。清大輔社長は「既存客とのやり取りを続けながら、面白い客とのコネクションを増やしていきたい」と説明する。
輸出を増やす一方で、「今後は国内ブランドが世界に羽ばたけるように後押ししたい」とも話す。
同社が取り扱う生地の8割ほどがデニムとなる。現在、デニムのニーズは高いが、今後は後染め生地の提案にも力を入れる意向を示す。
〈ダブル幅や後染め生地訴求/菱友商事〉
菱友商事(広島県福山市)は2025年4月期、前の期並みの売上高を確保した。
今期は後染めのカラーものや、ダブル幅のデニムの提案に注力する。産地内ではシャトル織機で織るセルビッヂデニムの生産が活況な一方、後染めやダブル幅の生地は「注目度が低い」(花田充民社長)と言う。現在提案を進める多色ジャカード生地に着抜・抜染を施したものなど、新たな生地提案などで拡販につなげる。
海外向けを意識した開発も推進。ミリタリー系の生地へのニーズが高い中、チノやダック、キャンバスなどの生地を豊富にそろえる。顧客の要望から、硫化染めしたチノクロスなども開発。洗い加工の見本とともに訴求する。オーガニックコットン使いの生地をバリエーション豊富に備蓄していることも同社の強みだ。