特集 全国テキスタイル産地Ⅱ(7)/糸・設備編/多種多様な取り組みで
2025年07月31日 (木曜日)
〈仏製超音波溶断機を提案/高山リード〉
リード(筬〈おさ〉)を製造販売する高山リード(金沢市)は、製織よりも川下に当たる切断・溶着などの工程に対し、フランス・スプーレックス製の超音波溶断カッターを提案している。
従来の超音波カッターは切断だけだったが、このカッターは自動機に使用する船底型ホーン(振動部)を搭載し、溶断とほつれ止めを確実に行うのが特徴だ。
インテリア向け生地、ポリエステル生地のほか、サインやシートハウスなど産業資材シートのカットや溶着にも適する。カットテストやデモ機の貸し出しの要望にも対応する。
同商品は11月、幕張メッセで開催の「高機能素材week」で展示紹介する。リードやリードメンテナンス機器は10月28日~31日、シンガポールで開催の「ITMAアジア+CITME」で新製品を打ち出す。
〈高級ゾーンで高い評価/東洋紡糸工業〉
カシミヤ紡績の東洋紡糸工業(大阪府忠岡町)は、得意の高級カシミヤ糸に加えて、シルクの活用などでシーズンレス商品の開発・提案に力を入れる。
同社の強みは、希少な生後1年以内のカシミヤヤギの原毛を使用したベビーカシミヤに代表される高級糸。希少性への評価は高く、最近では高級ベビー・キッズ用途で採用されるなど根強い人気がある。
こうした実績を生かし、カシミヤ糸「ピアラ」やウール紡毛糸「チェス」など主力商品の提案にも力を入れる。
一方、紡毛糸は冬向けが中心なだけに近年の夏長期化傾向は逆風だ。このためシーズンレス商品の開発と提案を強化している。独自のプロテインコーティング加工で家庭洗濯(手洗い)も可能な絹紡糸「マユカ」もその一つ。また、和紙糸との複合といった開発にも取り組む。
〈ソフトタッチのラメ糸/泉工業〉
ラメ糸製造卸の泉工業(京都府城陽市)は、ナイロンラメに綿糸を撚糸した「セルソマ」をインナーやレッグなど肌に直接触れる用途に提案する。
セルソマは、肌当たりがソフトなナイロンラメと綿を組み合わせることで、従来はラメ糸の使用が難しかった用途での需要掘り起こしを目指す。後晒しや二浴染めによる染め分けも可能なことから、意匠性も求められるインナーやレッグ用途に最適だ。
また、織・編み工程や縫製工程で設備損傷が起こりにくい再帰反射糸「セッソンフリー」も開発した。セッソンフリーは糸の表面をポリエステルフィルムでカバーリングすることで反射材であるガラスビーズが露出しない。このため使用の際に設備が損傷するのを防ぐ。
〈高品質なリサイクル紡毛/大津毛織〉
紡毛紡績・毛織物製造卸の大津毛織(大阪府泉大津市)は、高品質なリサイクル紡毛糸「メリネス」の提案に力を入れている。
メリネスは、中国で調達した反毛原料を使用したもの。中国紡績子会社の上海金山大津毛紡織で紡績しているため、原毛から糸までのトレーサビリティーも確保できる。既にテキスタイル事業では大手郊外店に採用されるなど実績がある。今後は糸販売も拡大する。
同社は、ウール原料・製品の環境配慮に関する国際認証「RWS」(レスポンシブル・ウール・スタンダード)の取得も進めている。海外では普及が進んでいるが、日本の紡毛業界では取得が進んでいない。同社はいち早く認証を取得することで国際的な競争力の確保を目指す。
〈国内唯一で存在感発揮/アスキー〉
織機用テンプル製造のアスキー(浜松市)は国内唯一のテンプルメーカーとして存在感を発揮する。多彩なテンプルをそろえており、日系の織機メーカー向けに販売を進める。
テンプルは製織する際に生地を引っ張る部品。緯糸を打ち込む際の生地の収縮を抑制し、高品質な生地作りには欠かせない。リード(筬〈おさ〉)の摩耗や経糸切れを防ぐ役割もある。
同社が扱うテンプルは大きく分けて3種類ある。スパン向けの針リング、フィラメント向けのゴムローラー、そしてその中間という位置付けのゴムリングだ。
豊田自動織機や津田駒工業といった国内織機メーカーへの販売が中心で高いシェアを持つ。ここ数年は販売拡大を目指して、海外の織機メーカーに向けて攻勢を掛けている。
今後は生産面での自動化を図る。省人化とコスト削減が狙い。先ずは国内工場で進め、将来的には量産が中心のインドネシア工場でも実践する。
〈デニム用糸の生産体制強化/山忠紡績〉
山忠紡績(大阪府岸和田市)は、デニム用太番手糸の需要拡大を受け、生産体制を強化している。三備産地のデニム専業メーカーやジーンズ製造卸からの受注が好調に推移し、月産量は前年の600コリから700コリへと増加した。今後の需要増加を見据え、今秋までに保有する全ワインダーを新型機へ更新する予定だ。
定番商品のブレンド綿糸「サンライジー」とジンバブエ綿100%「サンアルバー」は、5~20番手を中心に安定受注を維持。トルコ産オーガニック綿100%の「ベルガモン」や、落ち綿使いの糸も拡充している。
昨年はオーガニック認証の「GOTS」も取得し、SDGs(持続可能な開発目標)関連製品が売り上げの3割を占めるまでに成長した。