ごえんぼう

2025年08月01日 (金曜日)

 「漫画の神様」といわれる手塚治虫の作品を初めて読んだのは大学時代。『アドルフに告ぐ』だった▼舞台は第2次世界大戦期の日本とドイツ。アドルフ・ヒトラーと同じアドルフという名の少年二人を軸に、戦争に翻弄(ほんろう)される人々と平和への思いが描かれる。“漫画=子供向け”のころの作品。残酷なシーンは多いが、「未来人」と呼んだ子供たちに真剣に伝えようとしたのだろう▼日本が終戦80年を迎える今も、世界では戦禍が絶えない。今日8月1日は、数十から数百もの子爆弾を無差別にまき散らすクラスター爆弾の禁止条約発効から15年だが、数日前にイランがシリア、タイがカンボジアに向けて使用したという。両国は条約に署名していないが、国際世論は厳しい▼『火の鳥』でも人間のさがや命の尊さを表した手塚。止まぬ戦禍に同苦、達観しつつ、17言語に翻訳された作品を通じて世界に希望を灯し続けるだろう。