クラレの繊維資材事業 衣料用途にも拡大
2025年08月04日 (月曜日)
クラレの繊維カンパニー繊維資材事業部は、主力のビニロン繊維で産業資材だけでなく衣料用途での販売拡大を目指している。そのために商品バリエーションも拡大した。一方、高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」は2025年度(12月期)から生産能力を増強しており、ここまで順調に販売が拡大している。
繊維資材事業部の25年1~6月期商況は、ほぼ計画通りに推移したもようだ。ビニロンではコンクリート補強材や建材など資材向けが前年並みの販売量を確保している。欧州市場は23年度からウクライナ紛争の影響などで需要に勢いがなく、米国市場も金利上昇による住宅着工件数減少などが逆風となっているが、いずれも当初から計画に織り込んでいた。
ベクトランは25年度から生産能力を20%増強した。スリングや船舶係留ロープ用途など太線度糸を中心に堅調な販売が続いている。このため能力増強した生産設備も順調に稼働している。
今後の戦略としてビニロンは用途の拡大を掲げており、難燃ビニロンでユニフォームなど衣料での販売拡大を狙う。国内では官需を中心に豊富な実績を持つ難燃ビニロンだが、海外ではほとんど普及していない。親水性があるため着心地に優れるといった特徴を紹介しながら、海外市場で新規性を打ち出すことでシェア確保を狙う。
後加工難燃素材と複合することで難燃性が向上する点などを訴求するほか、原着タイプもラインアップに加え、サンプル提案を進めている。これまで原着の難燃繊維を使用していた需要家が生産ラインを大きく変更せずに難燃ビニロンを採用できるようにするのが狙いだ。
一方、ベクトランは新規用途の開拓に力を入れる。特に資材向けで期待が大きいのが洋上風力発電施設に使用する係留索など。将来的に需要拡大が予想されることから現在、必要な物性などを確立するために大学などとの共同研究も進めている。
また、ベクトランも衣料用途の開拓に取り組んでおり、細繊度糸でアウトドア用リップストップ生地などへの提案が進む。鞘部分にポリアリレート以外の樹脂を配した芯鞘構造糸も開発し、染色も可能にした。これにより衣料用途で求められる意匠性にも対応する。