生地輸出連載 悲願達成に向けて⑱/小松和テキスタイル社長・CEO 大塚広和氏
2025年08月04日 (月曜日)
輸出拡大へ国内生産強化
――生地輸出の現状は。
新型コロナウイルス禍前から目を向けてきた輸出は、一時停滞しましたが、感染症の分類が第5類に移行してからは復活基調に入りました。以前の水準にはなかなか戻りませんでしたが、今年は2月以降に数字が増え始め、コロナ禍前を上回ることができそうです。
商社経由の取り組みになりますが、特徴のある生地を軸に中国や韓国市場に販売しています。綿や綿・麻が中心の柄物など当社独自の生地は注目されています。小ロット・短納期で対応を強化していますので、顧客にとっても使い勝手は良いのではないでしょうか。
――どのような生地に人気が集まっているのですか。
風合いの良い生地が人気を博し、顧客から指名も入ります。その代表が東京都内の染工場と取り組んでいる染色技術「東炊き染」です。石灰や植物あくを混ぜて炊き上げる「釜入れ」と呼ばれていた技法を再現しており、独特の柔らかな風合いを表現することができます。
特殊な染色釜を使用して加工を行い、ランダムな縦しわや風合いが特徴の「桐七炊き」も打ち出します。これらは当社だけでなく、取り組み先である染工場も利益が上がる仕組みを構築しています。そうでなければ、こうした特殊な加工ができなくなるからです。
――今後も海外販売は強化の方向でしょうか。
海外販路の開拓は欠かせません。欧州は環境規制がどのような方向に進んでいくのか、不透明な部分を残していますが、無視することはできない市場でしょう。欧州で認められれば、生地のブランディングにつながり、中国や韓国市場での拡販にも波及すると考えています。
海外販売拡大の一環として国内生産を強化します。現在は中国やインドで生機を作り、日本で加工を行っているのですが、日本での生機生産を検討しています。国内で一貫生産すれば欧州の規制にも対応が可能になるでしょう。将来を見据え、染工場を含めたチーム作りが不可欠です。
――輸出拡大への足掛かりは。
日本国内で開催されている生地総合展には出展していますが、海外の「プルミエール・ヴィジョン パリ」や「ミラノ・ウニカ」「インターテキスタイル上海」などにも出展したいです。自分たちの素材の実力がどの程度であるのか、それを感じたいと思っています。
(毎週月、火曜日に掲載)