ニイハオ!/東麗高新聚化〈南通〉・東麗高新聚化〈佛山〉総経理に就いた金 世一 氏/高度化と新規用途開拓へ
2025年08月04日 (月曜日)
東麗高新聚化〈南通〉(略称TPN)および東麗高新聚化〈佛山〉(TPF)の総経理として今年3月、約16年ぶりに中国・南通に戻った。母国語の韓国語と、日本語、中国語、英語の4言語を操るクワドリンガルだが、まだ勘が戻らない。「日本人の同僚に中国語で、中国人の同僚には日本語で話しかけてしまう」とほほ笑む。
韓国が就職氷河期だった2002年、東レセハン(現トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア=TAK)に入社した。同社は、サムスン子会社で72年創業の第一合繊を前身とするセハンと、東レの合弁会社で、設立3年目の新会社だった。「東レとのジョイントベンチャーになり、これから大きくなるという期待感が社内で高まっていた」と振り返る。入社後は、ポリプロピレンスパンボンド(PPSB)不織布の海外輸出に精を出した。
05年、TPNに出向し、同社の立ち上げに携わった。「南通当局で『土地証』(土地の使用権を証明する書類)を取得した翌日、土地の価値が大幅に上がったことをよく覚えている」
設立手続きには、同じ工業団地にある合繊製造子会社、東麗合成繊維〈南通〉(TFNL)の同僚が手を貸してくれた。「仕事だけでなく、プライベートでも仲良くなれことが良い思い出」と言う。
09年に帰任すると、新たな成長を求め、サムスンC&Tに転職。6年を経て「もっと大きな組織をマネジメントしてみたい」と、再びTAKに入社する。不織布関連2社の管理を任され、18年には不織布部門のゼネラルマネージャーに昇進。アジア各地で生産する衛材向けPPSB不織布のグローバル販売を担当した。
今回は、TPNおよびTPFの2社の総経理を務める。「兼任は想定外だった。両社は距離も離れており、負担は大きい」。一方「一緒に管理することで、同じ方向に向いて進んで行けるメリットがある」と強調する。
衛材用途のPPSB不織布を手掛ける両社は、中国メーカーの生産過剰や品質のアップグレードを受け、業績が低迷し、構造改革の真っただ中だ。しかし金総経理は、両社の今後について自信を持つ。東レグループのPPSB不織布事業全体の最適化が進行しており、それが功を奏すとみるからだ。
さらに「自社努力でも事業を改善させたい」と意気込む。衛材用途素材の高度化と、そのための生産設備の改造を検討する。新規用途の開拓も進めていく考えだ。
(上海支局)
きむ・せいる 2002年韓国ソウルの成均館大学経営学部卒業、東レセハン(現トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア)に入社。PPSB不織布の海外営業を担当する。05年東麗高新聚化〈南通〉に出向し、同社の立ち上げに携わる。09年サムスンC&Tに転職。15年トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリアに再入社。18年同社営業第2チーム・ゼネラルマネージャー。25年3月から現職。50歳。趣味は読書。