特集 スポーツ&アウトドアウエア(2)/素材編 高機能化と環境配慮で訴求/旭化成アドバンス/東レ・ライクラ/クラレトレーディング/帝人フロンティア/東洋紡せんい

2025年08月04日 (月曜日)

 サステイナブル活動が盛んなスポーツ、アウトドアアパレル業界では、製品の髙機能化と環境負荷軽減の両立に積極的だ。これは企業の社会的責任を果たすためであるとともに、環境問題への関心が高い消費者の価値観に応えるための重要な戦略でもある。その一翼を担う素材メーカーの注目商品を紹介する。

〈北陸の染工場と連携/旭化成アドバンス〉

 旭化成アドバンスは、主力のナイロン高密度織物「インパクト」シリーズを拡充している。

 インパクトは2025年度(26年3月期)に入っても好調が続く。ラインアップも拡充し、透湿防水生地「インパクトΣ」は、北陸の染工場と連携してラミネートフィルムから独自開発した高性能・高強力タイプをラインアップに加えた。

 リサイクル原料の活用も強化する。現在、エアバッグ原糸の製造工程で発生する端材を利用したケミカルリサイクルナイロン66繊維を基布に一部利用したタイプのインパクトΣの開発が進む。

 また、ノルウェーのトムラ・システムズの消費者参加型ペットボトル回収・リサイクルシステムによるリサイクルポリエステルペレット「ボトリウム」を使用したシャツやジャージの商品化にも取り組む。いずれもトレーサビリティーが確保されていることが強みだ。

〈PU弾性糸も環境配慮/東レ・ライクラ〉

 ポリウレタン(PU)弾性糸「ライクラ」を製造販売する東レ・ライクラは、スポーツ・アウトドアを含むアパレル用途で機能糸のラインアップを拡充している。特に環境配慮型商品を強化する。

 PUの環境負荷が注目される中で同社はバイオマス由来原料使いの「ライクラT―926C」を商品化した。さらにPU混素材からPU成分を抽出する技術を確立。滋賀事業場(滋賀県大津市)に試験機を導入してリサイクル技術の開発を進めている。まずはプレコンシューマー型で量産化を目指しているが、将来的にはポストコンシューマー型リサイクルの実現が目標となる。

 いずれもスポーツ・アウトドアなど環境配慮型素材への関心が高い用途から提案を進める。また、新規用途・新規販路の開拓も重視し、5月には「サステナブルマテリアル展大阪」に出展した。

〈注目高い「エプシロン」/クラレトレーディング〉

 クラレトレーディングは、スポーツ・アウトドア用途で独自性の高い素材を活用した生地・製品の提案を進める。

 現在、同社のスポーツ・アウトドア分野への販売は売上高の70~80%が縫製品。独自性の強い機能素材を活用した提案への評価が高い。

 その一つが、優れた速乾性とドライ感が特徴のシンジオタクチックポリスチレン(SPS)繊維「エプシロン」。25春夏向けから採用が始まった。抗ピル性と速乾性に優れるポリエステル短繊維素材「パナパック」使いTシャツなども好評だ。

 高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」を使ったリップストップ生地による商品企画も進む。猛暑対策として紫外線カット機能のある十字断面ポリエステル長繊維「スペースマスター」や透け防止機能が特徴のポリエステル繊維「エクステージ」も積極的に提案する。

〈高機能素材で攻勢/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアの機能資材部機能資材第三課は、スポーツ・アウトドア分野に高機能素材を投入する。シューズやグローブなどを深掘りする方針で、超高強力ポリエチレン繊維などを中心商材に攻勢をかける。

 超高強力ポリエチレン繊維を使った生地が「テクノフォーススチール」だ。軽量感や高強力といった特徴を持ち、2024年度(25年3月期)は、特にバックパック分野への訴求に力を入れた。25年度も引き続き提案を強化する。

 同時にシューズ用途も開拓する。耐久性が求められる用途・分野に需要があるとし、リップストップやラミネートで防水性を付与した生地をアッパー素材として打ち出す。

 ナノファイバーの「ナノフロント」は、ソックスやグローブをはじめ、幅広い用途で採用されている。26秋冬からは高機能中わたシートの海外展開も図っていく。

〈ナイロンニット生地を開発/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいは、スポーツ・アウトドア用途への生地販売に力を入れる。新たにナイロンニット生地も開発した。

 同社のスポーツ・アウトドア向け生地販売は2025年4~6月期も国内、海外ともに好調に推移している。特にピンタイプ仮撚り糸を使ったタイプの評価が高い。戦略素材として打ち出す高密度ポリエステル長繊維ニット生地「スクラムテック」も好調が続く。

 こうした中、新たに開発しているのが、海外のラグジュアリー市場で高い評価を得ているナイロン高密度織物「シルファイン」の原糸を加工糸にしたナイロン長繊維ニット生地。シルファインのブランドも活用することで特に海外市場での提案に取り組む。

 一方、利益率の面で苦戦が続いている縫製品は、国内縫製工場を再編し、一部を海外生産に移管することで収益性の改善を進める。