特集 安心・安全(8)/検査機関/現場のニーズに応える/カケン/ボーケン/QTEC

2025年08月06日 (水曜日)

 繊維を通じて安心・安全を支える評価機関の取り組みが進化している。カケンは化学防護服の需要増に対応し、耐透過性試験の設備を強化。試験対象物質の拡充や納期短縮を図る。ボーケンは防炎・難燃試験に加え、冷感や電動ファン(EF)付きウエアなど猛暑対策製品の評価にも注力。QTECは土木用繊維材料や防災用品の性能試験で、災害復旧や社会インフラ整備を技術面から支える。現場のニーズに応える体制作りを加速させる。

〈防護服関連の対応強化/耐透過性試験で設備増強/カケン〉

 カケンテストセンター(カケン)の東京事業所川口本所は、防護服に関する試験で安心・安全に寄与している。2024年4月に労働安全衛生規則等の一部を改正する省令が施行されて以降、耐透過性試験への問い合わせや依頼が増加した。設備を増強することで顧客のニーズに応えている。

 問い合わせ、依頼が増えたのは、「JIS T8030」に規定されている「防護服材料の耐透過性試験」。化学物質が透過する時間などを測定する試験で、川口本所の分析ラボで行っている。納期が最長6カ月かかっていたため昨年秋に設備を増設。依頼状況にもよるが2週間程度にまで短縮を可能にした。

 ガスクロマトグラフを2台増設し、4台体制とした。ただ、「ガスクロマトグラフの導入だけなく、専用のアタッチメントを自社開発している。このため国内で実施できるのはカケンだけ」と話す。納期短縮に加え、「できることを少しずつ増やしている」とする。

 その一つが、対応可能な化学物質の増加になる。アセトンやアセトニトリル、ジクロロメタン、メタノール、トルエンなど、JIS T8030に規定されている9物質に加え、顧客の要望が多いというメチルエチルケトン、イソプロパノールなどに応じる。現在は23の化学物質に試験が可能だ。

 今後も依頼のある物質については検討試験を行った上で、対応可能なことが分かれば追加していく。現状では、化学防護手袋が中心になっているが、化学防護服や化学防護長靴の試験もできる。

〈アパレルから産資まで/猛暑対策でも注目高まる/ボーケン〉

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)は、防炎・難燃など安全に焦点を当てた試験を幅広く実施している。アパレルからインテリア、さらには自動車など産業資材にまで対応する。

 ボーケンは自動車・産業資材分野の繊維・樹脂・ゴム類に対する難燃性評価で豊富な実績を持つ。自動車のフロアマットやカーシート、内蔵樹脂に対して米国自動車安全基準FMVSS302に基づいた難燃性試験が可能。性能評価や商品開発の支援など依頼企業との取り組みにも力を入れてきた。

 一般繊維製品分野でも高齢化などを背景に不注意による火災リスクの低減・抑制への要求が高まる。このため高齢者が普段から安心して使用できる防炎エプロンやアームカバーなどが登場した。また、アウトドアブームもあってキャンプ用品を日常使いするケースも増えており、火災を防止するために防炎・難燃アイテムが増加した。

 こうした中、ボーケンは日本防炎協会が定める防炎性試験基準に基づき、インテリアやアウトドアファブリックに向けた各種防炎試験を実施している。アパレル製品に求められる表面フラッシュ燃焼性試験も日本産業規格(JIS)や繊維評価技術協議会の規格に対応して実施する。

 猛暑対策に焦点を当てた機能性試験にも力を入れる。このほどグループに加わることが決まったユニチカガーメンテック(大阪府貝塚市)と共同開発した持続冷感性試験などへの注目は高い。電動ファン付きウエアの性能評価にも取り組む。いずれも評価モデルから開発した。

 試験だけでなく、表示への助言など商品企画から販売までサポートできる点もボーケンの強みとなる。

〈土木用繊維材料試験に対応/長年の実績で社会貢献/QTEC〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、地震や洪水などの災害復旧に用いられる土木用繊維材料の性能試験に対応している検査機関だ。試験は、耐候性土のうやジオグリッドの耐久性・強度など多岐にわたり、長年の実績と独自のノウハウによって社会の安心・安全に貢献している。

 QTECが土木用繊維材料の性能試験を本格化したのは、阪神・淡路大震災が発生した1995年。以降も震度7を超える地震は日本全国で発生し、大雨による災害も頻発する。さまざまな場面で使用される土木用繊維材料の性能評価という側面から日本社会を支える。

 土木用繊維材料には、河川・道路の災害復旧に用いる耐候性土のう、法面の補強に使用するジオグリッド・ジオテキスタイル、雨水を防ぐブルーシートなどが挙げられる。土砂崩れを防止するような大規模な補強材料から防水シートまで幅広く対応できるのがQTECの強みでもある。

 具体的には、繊維製品などの材料を屋外に長時間暴露した際に紫外線や温度、湿度、雨水に対する耐久性能を試験的に再現する耐候性試験、透水性能や通水性能を評価する排水性試験、引張強さ試験などを用意。ブルーシートについてはJIS(日本産業規格)の原案作成にも参画した。

 今後は、材料だけでなく、製品自体の性能試験も視野に入れる。また、テントやリュック、頭巾、手袋など災害時に必要とされる防災用品の試験にも積極的に応じており、そうした取り組みの認知を広げていく。