クラレ 繊維は通期で黒字確保

2025年08月13日 (水曜日)

 クラレは、2025年12月期連結業績予想を売上高8400億円(前期比1・6%増)、営業利益750億円(11・8%減)、経常利益690億円(15・3%減)、純利益330億円(4・0%増)に下方修正した。一方、1~6月期は営業損失となった繊維事業は売上高630億円(0・5%増)、営業利益20億円(66・7%増)と黒字回復を見込む。

 25年1~6月期は、ビニルアセテート関連事業が欧州経済低迷の影響で販売数量の回復が遅れたほか、在庫調整のための減産を実施したことで収益が低下した。活性炭事業も取引先の設備投資遅れから製品納入時期が7月売以降にずれ込んだことで計画を下回った。

 下半期(7~12月)に関して川原仁社長は「米国の関税政策の影響による世界的な需要減退が懸念される。引き続き影響を見極める必要がある」と強調した。

 繊維事業に関しては通期での営業黒字化を計画する。人工皮革「クラリーノ」は1~6月に米国の関税政策の影響で需要家が様子見の姿勢を強めたことにより販売量が伸び悩んだ。ただ、需要自体は減退していないことから、下半期での回復を見込む。

 繊維資材は、ビニロン繊維が販売数量こそ横ばいで推移するものの、在庫評価差額のマイナス影響などが緩和されることで収益は改善する見通し。また、高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」を中心とした高付加価値製品の拡販を進めることで利益も拡大する計画だ。

 事業ポートフォリオ高度化も進展した。繊維関連では乾式不織布の事業撤退が完了したのに続き、ポリエステル関連製品の生産終了を決定するなど最適化・体質改善が進む。ポリエステル製品の生産終了に関して川原社長は「中国などが強大な生産能力を持つ中で、国内で衣料用ポリエステル長繊維を生産するのは競争力の面で難しい」と説明する。

 一方で、衣料繊維分野は「クラレトレーディングがスポーツ・アウトドアを中心に縫製品まで含めたオペレーションで成果を上げている」と指摘。原糸を外部調達に切り替えた後も、トレーディング事業を中心に衣料繊維事業の維持・拡大を目指す考えを改めて強調した。

繊維は営業損失 25年1~6月期

 クラレの25年1~6月期連結決算は、売上高3999億円(前年同期比2・7%減)、営業利益262億円(42・2%減)、経常利益212億円(51・7%減)、純利益140億円(53・9%減)だった。在庫評価差額のマイナス影響などで大幅減益となった。

 繊維事業は売上高276億円(4・5%減)、営業損失5700万円(前年同期は営業利益7億2100万円)だった。ビニロン繊維など繊維資材は欧州の建材用途などが低調。在庫評価差額も収益にマイナス影響した。人工皮革「クラリーノ」も欧州市場の低調や電気自動車(EV)の在庫調整の影響などでラグジュアリー用途と自動車用途ともに販売量が減少した。

 トレーディング事業は売上高332億円(5・0%増)、営業利益30億4200万円(11・1%増)だった。繊維関連はスポーツ・アウトドア衣料用途が順調に推移した。高機能原糸や環境対応商品など高付加価値品の拡販も進んだ。