繊維ニュース

技術の眼/泉工業/豊島/モリトアパレル/内外特殊エンジ/エディー/宇仁繊維

2025年08月14日 (木曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こし得る重要な技術にスポットを当て、紹介する。

〈泉工業/設備傷めない再帰反射糸〉

 ラメ糸製造卸の泉工業(京都府城陽市)はこのほど、織り・編み工程や縫製工程で設備損傷が起こりにくい再帰反射糸「セッソンフリー」を開発した。扱いやすさを生かし、安全関連以外の用途にも提案を進める。

 再帰反射糸は、再帰反射素材をスリット加工して撚糸したもので、同社はこれまで主にパイピングやバイアステープなど細幅織物向けに提案を進めてきた。ただ、再帰反射糸は、糸の表面に反射材であるガラスビーズが露出しているため、織り・編み機や縫製機器の部材・部品を摩耗・損傷させることが多い。このため一般の織布・編み立て企業や縫製会社では扱いが難しく、専門業者でしか採用が進まないという課題があった。

 この課題を解決するために開発したのがセッソンフリー。再帰反射糸の表面をポリエステルフィルムでカバーリングすることでガラスビーズが糸表面に露出しないようにすることで使用の際に設備が損傷するのを防ぐ。

〈豊島/体を守る機能性ウエア拡充〉

 豊島は、生活や仕事の場面で体の負担を低減したり、健康を守る機能性アイテムの品ぞろえを拡充する。

 滑車の原理を活用した技術を取り入れ、腰から体幹を安定させる骨盤アシストパンツの提案を本格的に開始する。体を効率的に冷却するペルチェ素子式ウエアなど、猛暑対策に向けた商品展開も推進する。

 独自の骨盤アシストパンツ「腰シャキ!パンツ」は、滑車技術を搭載したことで、骨盤の左右のバランスを整え、姿勢のぶれを抑える。

 腰の部分の左右に取り付けた持ち手を引っ張ると、後部の"滑車"が動いて腰回りを締める仕組み。適度に締め付けられるまで持ち手を引っ張り、前部の面ファスナーで留める。

 猛暑対策として、ペルチェ素子式ウエア「コールドスパーク」を打ち出す。併せて、ミツフジ(京都府精華町)の猛暑リスク検知に特化したリストバンド型ウエアラブルデバイス「ハモンバンドエス」も提案していく。

〈モリトアパレル/ポリエス製樹脂ホック開発〉

 副資材製造卸のモリトアパレルは、ポリエステル製の樹脂ホックを開発した。同社によると世界初。ケミカルリサイクル、サーキュラーエコノミーに貢献する希少な樹脂ホックとして国内外で拡販に臨む。

 樹脂ホックの原料には通常、ポリアセタール(POM)が使われる。ポリエステルでは成型の工程で割れてしまうなど強度面で問題があり、これまで使われることはなかった。

 同社はこの問題を長年の研究によってクリアした。生産は国内の協力工場で行う。市場の反応は上々で、早速、ユニフォーム製造卸大手、アイトス(大阪市中央区)が25秋冬向け新作ワークウエア「エコワーカーストレッチ」シリーズのホックに採用した。

 好評を受ける理由は、ウエアの素材がポリエステル100%であれば、樹脂ホックを選別・分解することなく容易にケミカルリサイクルが可能な点だ。「ポリエステル製衣類のサーキュラーエコノミーに貢献する樹脂ホック」として「海外含めて横展開していく」。

〈内外特殊エンジ/地下水活用の新型冷風機〉

 染色加工場向けの繊維機械開発を主力とする内外特殊エンジ(京都市)は、地下水を活用した新型冷風機「アクアクーラー」を開発した。

 開発の背景には、同社のグループ企業である内外特殊染工(同)が、夏場の加工現場における効果的な熱中症対策を模索してきた経緯がある。

 アクアクーラーは、背面から有圧ファンで室内の空気を取り込み、フィルターと熱交換器の順に通して冷却、前方から送り出すシンプルな構造が特徴。冷却には地下水を冷媒として用いるほか、熱交換器とフィルターの両方にシャワーで地下水を噴射することで、冷却効果を高めている。

 内外特殊染工での試作機によるテストでは、空気がアクアクーラーを通過する前後で5~8℃の温度低下を確認。コンプレッサー式スポットエアコンと比べて構造がシンプルなため、価格を抑えられ、電力消費も少ない点をメリットとして挙げる。

〈エディー/最新鋭レピア織機〉

 ピカノール(ベルギー)の日本総代理店を務めるエディー(大阪府東大阪市)は、中伝毛織(愛知県一宮市)でレピア織機の最新機種「ウルティマックス」の内覧会を開いた。

 ウルティマックスは昨年から本格的に販売を開始した。世界で唯一の駆動方式を用いており、他の部品の介入なく多彩な機能や稼働速度を制御できる。シンプルな構造を実現したことで高い耐久性も特徴だ。

 生地のトレンドや労働環境のニーズも踏まえた。再生糸など形状が不ぞろいな糸でも均一に製織できるほか、絵のアイコンで表示されるタッチスクリーンのコントロールパネルを採用し、直感的な操作ができる。

 国内では人手不足や技術継承に悩む織布工場は多い。エディーの井出雄基専務取締役は「この機種を使えば、誰でも同じ結果が出せる。デジタル技術で人に頼らない調整も可能」とアピールした。

〈宇仁繊維/高通気で2種の自社ブランド〉

 生地製造卸の宇仁繊維(大阪市中央区)は、通気性に優れた生地をシリーズ化し、2種の自社生地ブランド「エアーコンフィー」「ウニエア」として打ち出す。

 長く暑い夏を乗り切るための生地として産地メーカーと共同で開発した。糸の太さと独自の織り・編み組織によって生地に微細な穴を開け、通気性を飛躍的に高めた。穴は非常に小さいため無地見えするが、肌離れに優れ、快適な着心地を実現する。

 エアーコンフィーは現在、織物5種、トリコット1種の計6種で展開する。ポリエステル100%の撥水(はっすい)、綿・麻ストレッチ、絡み織り、中空糸使いの防透けなど。

 通気性試験(1平方センチの面積を1秒間でどの程度空気が通過するかを意味する数値)は、75~176立方センチ毎平方センチ毎秒と、品種によって異なる。

 ウニエアは導電糸を使い、耐久性も引き上げた分、50立方センチ毎平方センチ毎秒、90立方センチ毎平方センチ毎秒という数値になっている。