ユニフォーム市場の深層(3)
2025年08月20日 (水曜日)
内食・中食拡大で堅調な「食品白衣」
「食品白衣」は前年比3・5%増の202億円だった。食品製造業の事業所数はここ数年2万4千カ所前後で推移しているが、物価高を背景に内食・中食の需要が高まり、市場を後押しした。日本惣菜協会によると、2024年の中食・惣菜市場は前年比2・8%増の11兆2882億円となった。
加えて、衛生管理の国際基準「HACCP(ハサップ)」対応も追い風となった。製造工程ごとのリスク管理体制が標準化され、異物混入や微生物汚染の予防が進む。大手だけでなく中小工場にも対応が求められ、輸出や企業間取引ではHACCP準拠が信頼性の証とされる。24年の食品輸出は前年比3・7%増の1兆5073億円と過去最高を更新し、12年連続で増加した。
「学生服」は前年比1・4%増の1332億円。性的少数者(LGBTQ)への配慮からブレザー型へのモデルチェンジ(MC)が進み、ニッケ調査によると24年度入学のMC実施校は735校と、過去2番目の多さとなった。
業界大手のトンボ・菅公学生服・明石スクールユニフォームカンパニーは増収基調を維持。MC需要が成長を支えている。一方、詰め襟やセーラー服など従来型の需要や生徒数は減少傾向。ただし、公正取引委員会によると、中高生向けブレザーの価格は上昇傾向にある。私立校を中心に、パーカやハーフパンツなどオプションアイテムの導入も市場拡大に寄与した。
「メディカル・介護」は2・2%減の575億円。福祉医療機構(WAM)の調査では、診療報酬改定後に収益は増えたが、医業利益は減少した。医業赤字の病院は69%、経常赤字は61・2%に達し、経営の厳しさが浮き彫りとなった。コロナ関連補助金の縮小で経費の見直しが進み、ユニフォーム需要にも影響が出たとみられる。
介護分野では処遇改善加算の見直しや最低賃金の上昇により経営負担が増加。加えて、生産性向上推進体制加算の新設により、ICTや介護ロボットなどへの投資が進み、ユニフォーム以外への支出が拡大した。
「オフィス」は4・9%減の241億円。18年以降、減少傾向が続いている。服装規定の緩和により、スーツや制服ではなく自由な服装を認める企業が増加。コロナ禍以降は銀行や大手企業でも制服廃止の動きが広がった。「女性=事務服」への見直しや、LGBTQ配慮による制服選択制の導入も進んだ。さらに、ウールからポリエステルへの素材転換による単価下落も市場縮小の一因となっている。