特集 スクールスポーツウエア(1)/差別化提案で採用に
2025年08月20日 (水曜日)
今春の入学商戦では、大手学生服メーカーが独自の機能を持つ自社ブランド商品など、差別化した提案で採用につなげた。また、安定的な供給が求められる中、今春も各社は早期的な対応によって順調な納品につなげた。近年、夏季に酷暑が続く中で暑さ対策への注目も高まっており、各社は変化するニーズに対応した商品開発にも力を入れている。
〈自社ブランド伸ばす〉
スクールスポーツ事業を展開する企業は今春も、ニーズを捉えた体育着の提案によって市場の深耕に取り組んだ。特に大手学生服メーカーは、独自の自社ブランドを武器に採用校の拡大につなげた。
スクールスポーツ市場でシェアトップを誇る菅公学生服は、「カンコー」ブランドの提案に引き続き注力している。中でも主力ブランドである「カンコープレミアム」は、軽量性や耐久性、防風性などを兼ね備える生地「グランガード」の機能性の高さや、高級感のあるシンプルなデザインが好評で、「順調に販売が伸びている」(勝山裕太営業本部企画推進部スポーツ企画推進課長)。同ブランドの累計採用校数は約650校になった。
カンコーブランドでは中学校向けの商品ラインアップも拡充してきており、こちらも実績につながってきた。
トンボは、昇華転写プリントでのデザイン提案力を強みに、販売を広げている。自社ブランドの「ビクトリー」は、デザインを自由に表現できる昇華転写プリントの強みなどが評価され、採用校増につながった。デザインで差別化できるなど、昇華転写プリントのニーズは依然高く、今春の入学商戦では、同社の新規獲得校の約半分が昇華転写プリントを採用したという。
同社では昨年から、紅陽台物流センター(岡山県玉野市)に隣接する新たな昇華転写工場が本格稼働を始めており、今春の納期対応にも貢献。今後は自動裁断機(CAM)とプレス機の導入も計画するなど、さらなる設備の増強も視野に入れる。
今春から新たな自社ブランドを投入しているのは明石スクールユニフォームカンパニー。新ブランドの「FEEL/D.」(フィール/ディー)は、防風やメッシュなど、体の部位によって素材を変えるほか、立体裁断などによる機能性の高さが特徴。デザインもシンプルに仕上げた。
中新慎司営業企画本部営業第二部長兼スポーツ営業課兼AC営業課長は「素材、機能性、パターン設計が受け入れられた」と話す。今春は約50校の採用を得るなど、好調な滑り出しを切った。
スポーツメーカーも攻勢をかける。ミズノは今春の入学商戦で、昨春よりも売り上げを伸ばした。一部のスポーツ専業メーカーによる事業撤退の受け皿として、シューズの採用が進んだ。併せて、ウエアの提案も行ったことで採用が増えた。
学生服業界では近年、性的少数者(LGBTQ)に配慮する流れから、中学校を中心に性差の少ないブレザーへと制服をモデルチェンジ(MC)する動きが活発になっている。MC校の増加で学生服の生産、納品の難易度が高まる中、スクールスポーツ分野においても各社は今春も、新規注文の締め切りを早めるなど、早期対応によって安定生産、安定納品につなげた。
〈ライセンスブランドも貢献〉
自社ブランドを育てる動きがある一方で、学生服メーカーにとってライセンスブランドも引き続き採用校の拡大に貢献する。
トンボでは、ライセンスブランドの「アンダーアーマー」が2023年の入学商戦での投入以降、ブランド訴求力によって販売を伸ばしており、採用校数は累計で200校超となった。「ヨネックス」も堅調で、今春は50校の新規採用校を得た。
菅公学生服はファイテンとのダブルネーム「カンコー×ファイテン」の販売が順調で、スポーツ強豪校などで採用が進む。昨年発表した、スクールバッグやゴルフバッグ、アクセサリーのOEM生産などを手掛けるEQ japan(千葉県松戸市)のスポーツブランド「ブルイク」とのコラボレーション体育着「カンコーブルイク」は今春、私学を中心に4校が採用。同社とも連携し、営業活動に力を入れる。
明石スクールユニフォームカンパニーは「デサント」で昨年並みの新規校を獲得。ブランド力とともに、ブランドに裏付けられた機能性が支持されている。採用校は累計で2300校超となった。
今春から「ヒュンメル」の販売を本格化させているのは瀧本(大阪府東大阪市)だ。今春は約20校に採用され、順調な滑り出しを見せる。
同ブランドの商品には“フェーズフリー”という新しい観点も取り入れる。フェーズフリーとは、平常時、災害時ともに役立つデザインにしようとする考え方で、同社は学生服メーカーとして初めて「フェーズフリーアクションパートナー」に認定された。今後もフェーズフリーを通じた販路拡大と製品ラインアップの拡充を図っていく。
〈暑さ対策ニーズに高まり〉
近年、猛暑が国内を襲っている。今月も5日に群馬県伊勢崎市で41・8℃と国内最高気温を記録するなど、各地で記録的な暑さとなっている。そのような中、体育着でも暑さ対策へのニーズが高まっているほか、夏用の体育着の着用期間も長くなっている。
トンボは「生徒の快適性やパフォーマンス向上を促すために、通気性に優れた素材や吸汗速乾、UVカット機能を備えたウエアがより重要になっている」とする。明石スクールユニフォームカンパニーも、夏向けの素材開発を今後も継続していく考えを示す。
ポロシャツを制服兼体育着として採用するほか、制服の代わりにハーフパンツを着用する学校も一部で出てきた。菅公学生服では、体育着で採用していた素材を使ったハーフパンツ制服をこのほど開発。来春からの販売を見据え、提案を進めている。また、防透性に優れたスクールウエア「ミエンヌ」は、UVカット効果があることから、遮熱対策という面もうたいながら訴求している。