紡績や商社 “高通気+α”で来夏捉える
2025年08月21日 (木曜日)
記録的な暑さが常態化する中、紡績各社は来夏に向けて高通気性を軸にした新素材の開発を加速している。単なる「涼しさ」にとどまらず、防炎やストレッチ、環境配慮といった“+α(アルファ)”機能を付加し、ユニフォームやシャツなど幅広い分野で採用増を狙う。
シキボウはユニフォーム向けに、校倉(あぜくら)造り構造の高通気「アゼック」を主力に販売を拡大する。強撚糸やストレッチ加工「パワール」、毛羽を抑える特殊紡績糸「クールボディ」と組み合わせた素材も投入し、バイオ由来ポリエステルの採用で環境配慮も打ち出す。
前期(2025年3月期)、ユニフォーム用途への販売が2倍増と好調だったのがクラボウの高通気・ストレッチ「ジェットエアー」。難燃「ブレバノ」や、電気・電子技術分野の国際規格IEC(国際電気標準会議)に対応する高制電「エレアース」との複合提案も進める。ポリウレタン不使用ながら15%以上のストレッチ性を確保し、暑熱下での動きやすさが市場で高く評価されている。
シャツ分野では日清紡テキスタイルが関心を集めている。「クールメソッドAT」は独自のハニカム構造により一般シャツ地の5倍の通気性を実現。衣服内温度を約2℃下げるほか、形態安定性や肌離れ性にも優れる。純綿でありながら形態安定性を備え、制菌加工との組み合わせで清潔性も高めた。
秋冬素材のイメージが強かったウールを、夏場にも適した素材として打ち出すのがニッケだ。ウールと再生ポリエステルを組み合わせた新素材「クールツイスト」は、糸の交点を立体的に重ねて空隙を広げ、通気性を従来比90%向上させた。吸湿性や消臭性にも優れ、高温下でも涼しさを確保する。既に官公需向けのシャツなどに採用されている。
専門商社でも新素材続々
専門商社も“暑くて長い夏”を見据えた高通気素材の開発を活発にしている。宇仁繊維(大阪市中央区)は、「エアーコンフィー」「ウニエア」の2ブランドを投入。糸の太さや独自の織り・編み組織で生地に微細な穴を設け、無地に見えながらも肌離れと清涼感に優れた快適性を実現した。
スタイレム瀧定大阪(同浪速区)の「エアスレーションプラス」は、UVカットや遮熱性を備えた高通気素材。吸水速乾性とUVカット、接触冷感、防透けなどを併せ持つ「アスレアクト」とともに、スポーツやアウトドア需要を捉える。
一村産業(同北区)では、高伸縮「ラクストリーマ」をベースにした高通気「アミド」など新商品の投入がユニフォーム用途への販売をけん引している。アミドはIEC対応の「エレジスト」と組み合わせた素材供給も可能だ。
各社が通気性の数値化や体感温度低下の実証など、エビデンスを伴う提案を重視する。来夏に向け、高通気を軸に、防炎や環境配慮といった付加価値を組み合わせる動きが一段と広がりそうだ。