特集 大阪・泉州タオル産地(3)/変化への対応が続く/袋谷タオル/大善/竹利タオル/成願/美由喜タオル

2025年08月26日 (火曜日)

〈袋谷タオル/「野菜染め」採用広がる〉

 袋谷タオルの2025年8月期は収益ともに前期比で横ばいとなる見込みだ。既存販路からの受注は減少傾向にあるが、付加価値を高めた利益率の高い製品提案が奏功し、新規販売先も得ている。

 ただし、各種原料や加工料金に加え、生産設備の保守コストの上昇が利益を圧迫しつつある。

 7月までは染色加工代金の値上げに伴う駆け込み受注が多く、稼働率は高まった。袋谷謙治社長は「価格転嫁を段階的に進めている。販売先の理解も得られている」と話す。

 ただし、今年後半に向けた年賀あいさつ用途の名入れタオルの価格交渉は今後進めるため、値上げの影響が懸念される。

 独自製品の販売では「のこり福」「雫」の引き合いが増えている。袋谷社長は「全国各地の食品・名産品の残しや廃棄部分を染色原料に使う仕組みが高い訴求力になっている」と話す。鉄道会社やレジャー施設など新規販路の開拓につながっている。

 水なす、たまねぎ、にんじん、バジル、キャベツなど、同社独自製品に刺しゅうを施してダブルネームで販売するOEM採用も出ている。

 さまざまな原料をイメージ通りに染め上げる技術も確立していることから、協業相手や販路を見極めつつ「丁寧に大切に売る」(袋谷社長)と話す。

 海外市場開拓では和紙使いのタオル提案を中心に続けている。小規模ながらセレクトショップなどから引き合いがあり、見本市出展などでアピールを継続する。

〈大善/生産体制維持に注力〉

 大善の室谷哲二社長は、現況について「贈答用途の需要減の影響が大きく、生産減が続いている」と話す。ノベルティー用途なども減少しているほか、原料や資材などの価格上昇が続いていることから「新たな販路開拓とそれに応じた製品開発が必要になっている」と話す。

 同社は2024年に自社通販サイト「糸AWASE」(しあわせ)を開設。吸水力に特化したタオル「綿力」など独自製品を販売している。自販事業の展開は「自販のノウハウ構築も含め、時間をかけて徐々に拡大していく」と話す。ふるさと納税の返礼品用途としての販売も進めているが、「タオルはライバルが多い」ことから短期間での拡大は難しいとみている。

 このほど、本社工場に空調を備えた休憩室を設けた。室谷社長は「人件費上昇が課題ではあるが、製造業として労働力を確保しておく必要がある。長期の雇用につながる福利厚生の充実も進める」と述べる。

 「綿力」のパッケージをカジュアル感のあるものに変更するなど、製品の開発と改良も続ける。

〈竹利タオル/工程管理の緊密化図る〉

 竹利タオルの竹本利隆社長は現況について「稼働率は前年と比べても大きな変化はなく、安定している」と話す。

 OEM事業では「備蓄が減少した製品の補充が定期的にある状況」が続いており、7月以降の染色加工料金が上昇することでの“駆け込み生産”も一部にとどまっている。

 現状の課題として、産地内のサプライチェーン衰退の影響が出始めたことを挙げる。近隣の夏祭りで使われる数百枚単位の名入れタオルの受託を得ているが、製販や捺染などの各工程に廃業があり、「例年通りに――という手法が使えない」ため、緊密な工程管理が必要になってきたと言う。

 ヘム縫製の担い手も高齢化が進み、これまで外注先で行っていた生地裁断を同社内で行ってからの納品が必要になるなど、細かな対応が要求されている。

 将来的な縫製工程の確保について、竹本社長は「自社での内製化も検討しているが、人件費アップへの対応だけでなく人員の確保ができるかという段階から課題がある」と話す。自動縫製機を活用しやすい製品開発も併せて検討する

 コスト構造の変化の影響も大きいとしており、「付加価値の高い製品開発だけでなく、販売手法までも含む、根本からの見直しが必要になってきた」とみる。

 今夏は地元の貝塚市が大阪・関西万博で設けたブースでオープンファクトリーを開いた。ミシンでヘム縫製の体験ができ、自社だけでなく、泉州産地のタオル製造を来場者にアピールした。

〈成願/強みの生産規模を維持〉

 成願の2025年6月期は、前期比で微減収・微増益となる見込みだ。仙波一昌社長は「OEMなど既存の販売チャネルの減少が続くなかで、利益が見込める商品開発と販路開拓が底支えした」と話す。

 タオル製品の店頭販売や贈答用途については「今後の販売回復や長期的な拡大は見込みにくい」と指摘する。

 一方で「当社の持つ生産規模が強みになるケースも出てくる」とし、付加価値の高いタオル生地を素材として供給・販売するなど、規模の維持を重視する。具体例としては、生分解性を軸とした環境対応素材「ピエクレックス」を使った製品提案と販路開拓を進める。

 仙波社長は「開発段階から、どのような手段や場所で売るかという出口戦略を重視している」と話し、ピエクレックスを展開する企業や自治体とのつながりを生かした展開を図る。また、自社でのネット通販やクラウドファンディングサイトを活用した提案や販売も継続する。

 生産規模の維持に関しては、労働力の確保も課題として挙げる。現段階では労働力不足はないが、将来的な新規雇用や従業員の高齢化、人件費上昇などが懸念されるという。高効率化や省人化を重視した設備投資で対応するほか、無駄な作業や在庫を発生させないことを念頭に置いた製品企画・開発を進めることで対処を図る。

 26年に創業80周年を迎える。仙波社長は「100年周年を迎えられるよう、時代の変化に合わせた施策を考えていく」と話す。

〈美由喜タオル/寝具を返礼品に提案〉

 美由喜タオルは、自社の持つ機能素材と織布技術を生かした寝具を開発した。地元・泉佐野市のふるさと納税の返礼品として今年7月から2種を出品する。

 いずれも機能素材を採用し、睡眠時の温度や湿度を快適に保てることが特徴となる。

 「うとうとタオルケット」は綿とアクリルの組み合わせにより、吸水性と湿度放散性を持つ東洋紡の「ハーフコット」をパイル部に採用。寝床内の環境を快適に保つことができる。

 「ヒートケア肌掛け」は中わたに東洋紡の吸湿発熱素材「モイスケア」を使用するほか、肌に当たる面に綿の層を、その内側にアクリルの層を配し、快適な寝床内温度・湿度を実現する。

 いずれも通年使える寝具として提案する。それぞれで採用されている機能素材も長年にわたって市場で支持されている信頼性の高い素材で、同社でも長年にわたりOEM製品の製造過程で取り扱ってきた実績がある。

 織布や縫製仕様は同社オリジナルとし、タオルケットはベージュ、ライトグレー、アッシュピンクの3色をそろえる。