ごえんぼう
2025年08月27日 (水曜日)
「顔を上げると、さっきは気づかなかった黒松林の蝉しぐれが、耳を聾(ろう)するばかりに助左衛門(文四郎)をつつんで来た」▼藤沢周平著の時代小説『蝉しぐれ』の一節で、セミを用いた描写がほかにもちりばめられ、物語に深みを与えている▼セミは人にとって身近な生き物で、夏の季語としても親しまれてきた。しかし、今夏は気温が上がる昼間にセミの声があまり聞こえないと話題に上った。セミが活発に鳴くのは、一般的に気温が25~33℃の間で、35℃を超える猛暑日にはセミも夏バテのような状態になり、鳴かなくなることがあるという▼夏の終わりから秋の訪れを告げるツクツクボウシ。盆明けあたりから関西でも鳴き声を耳にするようになったが、猛暑日が8月下旬も全国で続き、晩夏とは言い難い。9月も高温が続く予報が出ており、長く暑すぎる夏はセミにとっても生きづらくなっているのかもしれない。