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シキボウ 海外事業規模倍増へ

2025年08月28日 (木曜日)

 シキボウの繊維事業は、中東民族衣装向け生地輸出や東南アジアでのユニフォーム地の販売など、海外ビジネスが拡大している。今期(2026年3月期)から始まった3カ年の中期経営計画では、売上高に占める海外比率を「倍増させる」(尾﨑友寿上席執行役員繊維部門長)方針。

 好調な中東輸出や、得意とする夏物素材の需要拡大を追い風に攻勢を掛ける。

 繊維部門の第1四半期(4~6月)は、売上高47億2500万円(前年同期比0・5%増)とほぼ横ばいだったものの、営業損益が前年同期800万円の赤字から7200万円の黒字へ転換した。中東輸出が引き続き堅調だった。

 ユニフォームではアパレルの在庫調整の影響が残るが、高通気素材「アゼック」や電動ファン付きウエア向けの生地販売が拡大。特にアゼックはストレッチや環境対応などバリエーションを広げ、「大型別注も含めて指名買いが多い」(尾﨑上席執行役員)と言う。

 繊維部門は25年3月期で7期ぶりに営業黒字化を達成した。今期は四半期ごとの安定的な黒字を目指し、「筋肉質な収益体質」への転換を進める。海外比率は「まだ低い水準」にとどまるが、中計期間中に2倍の規模へ引き上げる。

 中東輸出は前期に30%増収と大きく伸び、今期は横ばいから10%増を見込む。織布・染色加工のシキボウ江南(愛知県江南市)では設備投資を行い、輸出用生地の生産能力を2倍に増強した。

 一方、需要の「踊り場」も想定し、素材開発を改めて強化する。モダール混特殊紡績糸を加工した織物「セルグリーン」が売れ筋だが、次のヒット素材の開発も進める。ブランディングに力を入れ、飾り糸など周辺アイテムの販売を始めるほか、アバヤやヒジャブといったトーブ以外の民族衣装向けの市場開拓も進める。

 海外拠点を活用したユニフォーム地の現地内販にも取り組む。東南アジアの日系の現地工場に対し、アゼックなど気候に合わせた素材提案を始めた。

 昨年開始したベトナムでの糸の備蓄販売も「成約が出始め、順調な滑り出し」と言う。グループ会社の新内外綿と連携し、糸から生地、製品へとつなぐバリューチェーンの構築を進め、グローバル市場での成長を加速させる。

UTCの事業承継「非常に大きな可能性」

 シキボウは、ユニチカの連結子会社であるユニチカトレーディング(UTC)の衣料繊維事業の大部分を承継する方向で、最終合意を目指している。詳細は合意後に明らかになる見通しだが、尾﨑上席執行役員は「両社の技術と販売網を組み合わせることで、これまで以上に多様な提案が可能になる。非常に大きな可能性を感じている」と期待を示す。

 UTCの連結売上高は約360億円で、このうち衣料繊維事業が200億円弱を占める。今回の譲渡によって、その約8割がシキボウに移る見通しで、単純合算すると繊維分野の売上高(25年3月期は201億円)の大幅な増加が見込まれる。