特集 染色加工(7)/市場の変化に対応/帝人テクロス/ヨネセン/山陽染工/木曽川染絨/洛東化成工業
2025年08月28日 (木曜日)
〈帝人テクロス/今期収益改善にめど/生産体制整備は継続〉
SUMINOEグループのスミノエテイジンテクノ(大阪市中央区)の子会社で、糸染め、織布などを行う帝人テクロス(愛知県稲沢市)は今期(26年3月期)、収益改善にめどをつける。前3月期は減収減益だった。
自社生産を増やし外注比率を引き下げるため、老朽化織機更新、撚糸機入れ替え、チーズ染色用の先巻きワインダー増強など生産体制を整備してきた。
今期はさらに織機の増設を予定。ドビー、ジャカードそれぞれ搭載のレピア織機を2台ずつ導入する。各種設備を保有する点は「外部からの評価も高まりつつある」とグループ企業、尾張整染(愛知県一宮市)の常務でもある中島俊広取締役は言う。尾張整染から人材も送り込んでおり「道半ばだが、意識改革も進んでいる。今期は先が見える段階に持っていく」考えだ。
今年3月には愛知県一宮市で開催された「ジャパン・ヤーン・フェア」に初出展した。今後も継続するなど外部発信も強化する。
〈ヨネセン/長繊維加工機を導入/新たな顧客開拓へ〉
合成繊維糸染めのヨネセン(奈良県大和高田市)は、長繊維に特殊な加工を施す機械を導入する。意匠性を持たせる加工機とみられる。
主力の染色事業の受注数量減に歯止めをかける狙い。近年、同社の糸染め事業は靴下やアパレル向けを中心に数量減が続いている。新たな繊維加工を強みとしてアピールし加工と糸染めの双方で新規顧客を見つける。
繊維加工関連で同社は、人工芝の“芝”部分の糸を不規則にカールさせる加工も手掛ける。
2022、23年と2年連続でそのための設備を導入し、これまで試験生産を続けてきたが年内にも量産へと移行する見通し。野球やサッカー場、グラウンドで需要が増えているという。
同社の25年上半期(1~6月)業績はほぼ前年並みで推移する。靴下・アパレル分野の染色で売上高が減る一方、高級車に使うカーマット分野が増収した。ラグなどインテリア繊維製品向けは前年並みを維持。アパレル分野の糸染めの受注数量は新型コロナウイルス禍前の19年と比べ15%減という。
〈山陽染工/中国市場を開拓/新自社ブランド販売も強化〉
山陽染工(広島県福山市)は今年から中国市場の販路開拓に力を入れる。自社ブランド事業にも注力する。展示会などにも出展しつつ、昨年立ち上げた新しい製品ブランドの販売を伸ばす。
近年、欧州を中心とした海外開拓を進めてきた。今年は来月開かれる生地展示会「インターテキスタイル上海」への単独初出展を契機に、中国市場の開拓を進める。戸板一平常務は「中国で販路を持っている商社との協業も含め、中国を中心にアジア向けを伸ばしていきたい」と説明する。
そのための加工開発も強化する。顔料使いの生地が好評なことから、リネン100%ツイルに顔料染めをした上から顔料コーティングを施した生地を開発するなど、充実を図っている。
ブランド事業も育てる。新ブランドはジェンダーレスデザインで、生地に焦点を当てた。営業活動によって卸先も広がってきた。大手の卸先を開拓するため、来月に東京都内で開かれる「トラノイ・トーキョー」に出展する。併せて、通販サイトや実店舗の開設も視野に入れる。
〈木曽川染絨/染色、機能付与、起毛など独自技術と対応力強みに〉
ニット向けの木曽川染絨(岐阜県笠松町)は染色だけでなく機能付与や起毛など、さまざまな加工を手掛ける。衣料品向けが主体で、総受託量は減少傾向で推移。短納期かつ多様化した加工依頼が増える中、独自技術と対応力を強みとする。
衣料品向けが中心のためトレンドに左右される部分もあり、受託内容は多岐にわたる。非フッ素対応の依頼が増えているため、加工剤の変更を中心に対応を強化する。機能性加工は抗菌防臭、消臭、保湿、防汚、接触冷感などが可能だ。
染色加工と機能付与加工を複合した受託量は総じて減少するが、起毛加工の依頼は増加傾向にある。薄手の編み地への起毛加工が主流も、冬物衣料としての側面を強めるために厚地に起毛を施してかさ高性を付与する依頼も増えている。
草木染めを施したアパレル「キソナチュラルダイ」と編み地「キソテキスタイル」の販売では、発信力の強化と販売戦略の高度化を進める。直販や期間限定店での販売も続ける。
〈洛東化成工業/幅広い素材に対応/新しい素材での開発も〉
洛東化成工業(大津市)は、新しい素材への対応などユーザーの要望多様化に対応する開発に注力する。足元の販売は地域や分野によって分かれるまだら模様の状況にあるが、全体では前年並みを維持している。
酵素技術を生かした糊(のり)抜き剤など前処理用を柱とする繊維加工用の販売は、前年並みで推移している。
染色加工場の廃業などで落ち込む部分がある一方、新素材の台頭や環境への意識の高まりなどで伸びている分野もあり、全体の販売量は維持している。
主力は綿用だが、近年は麻用が伸び、和紙用などでの要望も増えるなど素材の幅が広がっている。合繊用での要望も増え、市場で増える新しい天然素材への対応も求められていることから、今後に向けては幅広い素材の染色加工に対応する開発に力を入れる。
親会社となった多木化学とのシナジーも追求する。繊維以外の用途が中心になるが、さまざまなテーマで酵素技術を活用した新しい商品の開発に取り組んでいる。