ユニチカ “ベストオーナー”の下で再出発

2025年09月02日 (火曜日)

 ユニチカが地域経済活性化支援機構の支援の下で進める事業再生計画による繊維事業の譲渡・売却の全体像がほぼ出そろった。譲渡された事業・関係会社は今後、それぞれの“ベストオーナー”の下で新たな成長を目指すことになる。

 工場設備なども含めて規模が大きいポリエステル重合とポリエステル短繊維、ポリエステル高強力糸、ポリエステルスパンボンド事業などはセーレンへ譲渡。セーレンは100億円超を投じ、事業の再構築と成長を目指す。

 ユニチカトレーディング(UTC)の衣料繊維事業の大部分はシキボウに移管される。両社は2021年から製品開発や生地の生産・販売で協業しており、今回の事業譲渡によりさらなるシナジーが期待できる。UTCの中国やベトナム、インドネシア拠点の衣料繊維事業も加わり、シキボウの海外展開にも大きな役割を担うことになりそうだ。

 スパンレース不織布事業は瑞光(大阪市茨木市)がコットン製品製造子会社のCOTEX(岡山県倉敷市)で引き継ぐ。瑞光は紙おむつや生理用品など衛生用品の製造機を主力としており、事業ポートフォリオ拡充のため24年1月にCOTEXを設立していた。綿不織布を主力とするユニチカのスパンレース不織布事業を取り込むことで、さらなる収益力の向上を図る。

 合繊紡績子会社のユニチカスピニング(長崎県松浦市)はカワボウ(岐阜市)へ譲渡。カワボウはグループ会社のカワボウ繊維が梳毛紡績、撚糸、長繊維加工などの高度な技術を保有する。これに合繊紡績の開発・生産能力が加わることで技術的な補完関係を生かした相乗効果が見込める。

 試験・評価事業のユニチカガーメンテック(UTG、大阪府貝塚市)はボーケン品質評価機構に移る。UTGとボーケンはこれまでも業務提携関係にあり、評価技術・試験方法などの共同開発を行ってきた。UTGが持つ人体生理測定技術やサーマルマネキンなど特殊試験設備が加わることで、ボーケンの評価・試験のさらなる高度化が期待される。

 染色加工の大阪染工(大阪府島本町)は、本社工場の土地など固定資産をサントリーホールディングスに売却した上で、会社は清算する予定。染色加工事業の継続は難しかったようだ。

 ユニチカは事業譲渡に関して、取引先への供給責任維持や従業員の雇用確保などを重視し、譲渡先を慎重に選定してきた。おおむね“ベストオーナー”となる譲渡先が決まったと言えそうだ。ユニチカの事業再生は一つの段階をクリアしたことになる。譲渡された各事業は、新体制の下でさらなる成長を加速させていくことになる。