未来を照らす若人たち~今春入社した若手の思い(11)大和紡績 播磨研究所原綿素材G 佐野元輝さん
2025年09月03日 (水曜日)
自分の素材で暮らしを豊かに
「自分で開発し、その可能性を探る」――佐野元輝さん(25)は、自ら開発した素材をどう生かすか模索するシーズ開発に関心を寄せてきた。大学で化学全般を学び、3年後期から大学院にかけて高分子化学の研究室に所属。ポリマーの新規重合プロセスの研究に取り組んだ。
就職活動では繊維に限らず視野を広げていたが、繊維業界に進む同期や先輩が多く、自然と繊維企業も候補に加わった。その中で大和紡績と出会い、「繊維の可能性を追求する」という企業理念に強く引かれる。他社も受けたが、最終的な決め手は人柄。「出会った社員の皆さんが優しかった」と振り返る。入社後の自分を想像すると、「話しやすい雰囲気が何より魅力的に感じました」。この印象は入社後も変わっていない。
現在は試験場の紡糸・延伸設備を扱いながら、基礎作業を学んでいる。将来は自分の研究テーマを持つ予定だ。
大学時代はフラスコを振り、分析機器のシグナルを解析するなど手元作業が中心だったが、今は「汗をかきながら体を動かす作業」も多い。実機に近い設備を動かせる規模感の違いに新鮮さを感じ、「手元作業も、今のように成果物が形になる研究もどちらも楽しいですね」と笑顔を見せる。
現場では、先輩のスピード感と手際に日々驚かされている。不具合が起きても、瞬時に対処法を導き出す姿や、完成した試作品から読み取る情報量の多さに「なぜそんなことが分かるんだろう」と感銘を受ける。先輩からは「完成形をイメージして実験する」ことを教わった。わずかな条件の差が試作品の物性に影響することを知り、「これからやっていく上でやりがいになりそう」と期待を寄せる。
気になったことをすぐに質問できる環境が新しい発見を後押ししている。「経験を積み、スピード感のある対応ができるようになりたいと思っています」
大学での研究テーマは、精密ラジカル重合法の一つであるRAFT重合を用いた新規重合方法の開発だった。同社でのテーマはこれから決まるが、シーズ開発への関心は変わらない。「自分が開発した素材が製品に生かされ、人々の暮らしが豊かになる。そんな開発ができたらうれしい」