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豊島 高付加価値化や輸出強化

2025年09月09日 (火曜日)

 豊島は今期(2026年6月期)、高付加価値商材の提案や輸出などを強化する。また、8日付で豊島晋一専務が代表取締役社長に昇格する人事を発表した。

 豊島は今期(2026年6月期)、高付加価値商材の提案や輸出などを強化する。豊島半七会長は「商社として持続するためには売上高を確保し利益を立てていくことが重要」と強調。今期は売上高2150億円、経常利益130億円を目標に掲げる。

 製品部門はヘルスケア関連など付加価値商材の提案加速や、雑貨などの周辺商材の販売強化を進める。さらに多彩な提案によって、前期で落ち込んだ主力取引先向けの販売にも力を入れる。

 素材部門は輸出を推進することで増収を目指す。国内産地の疲弊によって数量が落ち込む中、海外に活路を見いだす。豊島会長は「輸出以外でも各課が施策を明確にして取り組んでいく」と話した。

 環境配慮関連の商材も注力する。同社は「テンセル」を皮切りに30年以上前から、そうした商材を供給しており、近年では顧客側から声が掛かることも増えているためだ。

 今期足元は堅調に推移する。

営業・経常利益過去最高に 25年6月期

 豊島の25年6月期単体決算は売上高2162億円(前期比1・8%減)、営業利益94億9千万円(同7・3%増)、経常利益130億6900万円(同12・5%増)、純利益91億9400万円(同13・5%増)だった。微減収も増益となり、営業ならびに経常利益は過去最高額を更新した。

 繊維原料・原糸・織物を合わせた素材部門合計の売上高は706億円(同3・5%減)だった。繊維原料では綿花販売が数量増も相場の下落により微減収。原糸では国内産地向けの販売減などが影響して前期比8%減となった。織物など生地ではユニフォーム向けや輸出が堅調。切り売り販売の減少でほぼ横ばいだったが、価格改定の効果もあり増益を確保した。

 製品部門は1418億円(同1%減)だった。雑貨やカジュアル向けの一部で受注減があったものの、子供服やワーキング、健康関連商材の販売増で補完し、ほぼ横ばいとした。

 製品部門の売上総利益率は前期比から1・4ポイント上昇し、営業増益を後押しした。高機能商材の販売増に加えて、物流の効率化やASEAN地域の生産比率増による製品原価高騰への抑制が寄与した。品質・生産管理の精度向上も増益につながった。

 売上総利益額は前期比5・5%増。販売費・一般管理費も4・8%増えたが、売上総利益額の増加が各項目の増益に直結した。

社長に豊島専務

 豊島は8日付で豊島晋一専務が代表取締役社長に昇格する人事を発表した。社長交代は23年ぶり。新社長に就いた豊島氏は「前社長が築き上げた事業基盤と変革を続けていく社風を引き継ぎ、お客さまと社会に貢献できる会社にしたい」と抱負を述べた。前任の豊島半七社長は代表取締役会長に就いた。

 同日に開いた決算会見で半七氏が明らかにした。社長交代の狙いについて、「当社の次のステップとなる経常利益150億円の目標が見えつつある中で、会社として若返りを図った方が良いと判断した」と話した。決めた時期は「今年に入ってから交代を決めた」と語った。

 豊島新社長については、「理系出身で人工知能(AI)やITにも強いため、次期社長にふさわしいと考えている」と評した。半七氏自身は代表権のある会長に就くが、経営は新社長に任せる方針としており、「私よりもはるかに今の会社のことを考えている」と信頼を寄せた。

 半七氏は1985年に同社へ入社し、2002年から社長を務めてきた。「色々な失敗や判断ミスもあったが、社員がカバーしてくれたからこそ、社長業を続けられてきたと思っている。そして、お客さまにも恵まれ、会社として成長させてもらえた」と振り返った。

 とよしま・しんいち

2001年3月東京大学工学部卒業後、21年5月豊島へ入社。同月総務部付監査担当、同年9月監査役、22年9月財務部部長を経て、同月取締役へ昇任。23年7月から専務。49歳。