ごえんぼう

2025年09月10日 (水曜日)

 「ぼくも非正規きみも非正規秋がきて牛丼屋にて牛丼食べる」。萩原慎一郎氏の遺歌集『滑走路』に収録された一首だ▼非正規雇用の店員が作った牛丼を、同じく非正規労働者の“ぼく”が頬張る姿が脳裏に浮かぶ。就職氷河期世代だった萩原氏は、非正規労働者として生きざるを得なかった人たちの存在をしっかりとらえた歌を残した▼元伊藤忠商事会長の丹羽宇一郎氏は「若者の非正規雇用化は中間層を崩壊させ、やがて消費や経済に影を落としていく」とし、「10~15年たつと崩壊し始めた社会構造が明確に姿を現す。その時になって気づいても『too late』だ」(小林美希著『年収443万円』)と2005年のインタビューで指摘していた▼24年の非正規雇用者は、65歳以上が増えていることもあり労働者全体の36・8%に上る2126万人と22年以降増加する。最低賃金引き上げなどが進むが、まだ間に合うだろうか。