シリーズ事業戦略/シキボウ 上席執行役員 繊維部門長 尾﨑 友寿 氏/外・外ビジネスを加速/グループ連携で市場開拓

2025年09月10日 (水曜日)

 シキボウは、今期(2026年3月期)から3カ年の中期経営計画のスタートを切った。繊維部門の4~6月期は、営業損益が黒字化し順調な滑り出し。尾﨑友寿上席執行役員は「売上高に占める海外比率を倍増させる」と話し、グループの連携を強みに「外から外へ」の海外ビジネス展開を加速させる。ユニチカトレーディング(UTC)の衣料繊維事業承継も決まり、国内外でシナジーを発揮できる体制へと変革を進める。

――第1四半期は黒字でスタートしました。

 トーブを中心とした中東民族衣装向けの生地輸出が堅調だったことに加え、ユニフォーム地では高通気素材「アゼック」の大型別注案件や、電動ファン(EF)付きウエア用途が拡大しました。原糸販売も、昨年からベトナムでの備蓄糸販売を本格化し、外・外ビジネスが着実に成果を上げています。

――ユニフォーム地は夏物を中心に需要が伸びました。

 アゼックはストレッチや環境対応などバリエーションを広げ、指名買いが増えています。フェアトレード綿を8%以上使用した「コットン∞」(コットンエイト)を組み合わせた商品も供給しつつあります。

 EFウエア向けには、綿100%と綿・ポリエステル混素材が採用されています。風を通さないためには高密度の設計が必要で、加工の難易度も高くなりますが、シキボウ江南(愛知県江南市)では18年に専用の染色機を導入しました。地道に生地開発を進めてきた成果が今期の拡販につながっています。加えて、中東輸出用生地の生産能力も2倍に増強し、安定供給体制の構築を進めています。

――中東輸出は前期に30%増収となりました。

 今期は横ばいから10%増を見込んでいます。シキボウ江南では旺盛な需要に生産が追いつかない状況で、来年3月まで受注が埋まっています。生産能力の最大化が急務です。

 今後の需要の「踊り場」を見据え、新規販路の開拓にも取り組んでいます。販売国の拡大に加え、アバヤ、ヒジャブといったトーブ以外の民族衣装向け素材や飾り糸など、周辺領域へも展開を進めます。売れ筋のモダール混特殊紡績糸を加工した織物「セルグリーン」は、発売から20年以上が経過しています。次なるヒット素材の開発に向けて、紡織技術に精通した人材を輸出担当に配置しました。

――外・外ビジネスの成果が出ています。

 ベトナムでは備蓄糸の販売が好調で、現地内販や三国間貿易へと広がっています。インドネシアのメルテックスやタイのJPボスコとも連携し、日本製の糸も含めて、ベトナム拠点から展開します。消臭技術「デオマジック」も海外での引き合いが増え、拠点を活用しながら拡販していきます。

――国内紡績の状況は。

 富山工場(富山市)やグループ会社のナイガイテキスタイル(岐阜県海津市)で高付加価値糸の開発に力を入れ、販売数量が伸びれば海外生産へ展開するスキームで挑戦します。グループ会社の新内外綿とは人材交流を進め、国内産地向け販売を同社に集約。シキボウは直販や海外営業に特化する体制に移行しました。

――その他の事業はいかがですか。

 ニット製品では、スクール向けに体操服用途が新たに加わりました。スポーツウエアブランド用途で培ったプリント技術を応用し、提案を強化しています。スクールシャツも堅調で、ポリエステル100%のトリコットなど合繊素材の比率が高まりつつあり、防シワや消臭機能などの付加価値を加え、展開を広げます。

 生活資材事業は、リネン資材が安定して推移しました。寝装品はふとんカバーなどの新製品を投入し、グループの丸ホームテキスタイルや中国拠点と連携して販売を強化します。

――設備投資の計画は。

 メルテックスでは紡績設備の更新による省力化を進めています。加工部門でも生産能力を高めるために染色設備の増強を進め、いずれも中計期間中に完了する予定です。

――通期の見通しは。

 アゼックを軸に海外でのユニフォーム地販売を拡大します。特に日系製造業が進出するインドネシアやベトナムの市場に向けた現地販売に注力していきます。

 グループ全体のチーム力も高まり、外・外ビジネスが組織内に定着しました。中計期間中に、売上高に占める海外比率を倍増する目標に向けて、取り組みを一層加速させます。

――UTCの衣料繊維事業の売上高は約200億円で、譲渡によってその約8割が移る見通しです。

 UTCとは、21年から開発・営業面で連携を続けており、互いの強みを熟知しています。ベトナムの拠点も、シキボウはホーチミン、UTCはハノイにあります。技術と販売網を組み合わせてシナジーを発揮し、グローバル展開に弾みを付けていければと考えています。