繊維リサイクル/若者の消費様式が変容/参加型の取り組み重要に
2025年09月17日 (水曜日)
繊維産業による大量廃棄が世界的な問題となる中、日本でも繊維リサイクルは重要課題となる。一方、繊維リサイクルの社会実装に向けたハードルも高い。特に使用済み繊維製品の回収の普及には消費者の意識と行動様式の変容が必要だ。この課題を克服するために大学生など若者が中心となった参加型の取り組みが重要になる。(宇治光洋)
経済産業省は「繊維製品における資源循環ロードマップ」として、2030年度には「家庭から廃棄される衣類の量を20年度比25%削減」「手放される衣料品のうち、繊維to繊維リサイクルで5万㌧を処理」するという目標を掲げる。この実現に向けて、官民挙げての取り組みが進められている。
ただ、廃棄衣類削減と繊維リサイクル拡大は行政や企業の努力だけでは実現しない。いずれも消費者の意識と行動様式に依拠する部分が大きいためだ。消費者の意識や行動様式に変容をもたらす取り組みが不可欠となる。特に消費行動をリードする若者への働きかけの重要性は高い。
そうした取り組みを進める団体の一つが一般社団法人テキスタイルサーキュラーネットワーク(TC―Net)。大津毛織(大阪府泉大津市)、中古衣料品リユース・リサイクル事業のファイバーシーディーエム(堺市)、日本通運、帝人フロンティア、上田安子服飾専門学校、障害者作業施設を運営する社会福祉法人泉大津みなと会(泉大津市)、協同組合関西ファッション連合(KanFA)、クリーニングのフランス屋本部(岸和田市)、ディスプレー用品企画・制作のエー・ディー(東京都中央区)が参加する。
TC―Netは東京都葛飾区、埼玉県和光市、東京都三鷹市と連携協定を結び、自治体施設やイベント会場に使用済み繊維製品回収ボックスを設置するなど消費者の直接アプローチすることで廃棄繊維の回収システムを構築しようとしている。
大学との連携によって若者へのアプローチを進める。立命館大学の学生団体「リツクロ」と提携したほか、日本繊維機械学会の繊維リサイクル技術研究会が中心となって、研究者・学生・企業の有志が繊維リサイクルの検証や実践に取り組むプロジェクト「エンウィクル」とも連携した。
そのエンウィクルは、学生が主体となるイベント「私たちのSDGs」を22年から実施する。TC―Netの協力で古着回収と譲渡会を開いた。また、学生が企業から提供された廃棄衣料を材料にアップサイクル製品を制作し、展示即売やファッションショーも行った。
イベントを指導した京都光華女子大学の宮原佑貴子准教授は「この経験がきっかけとなって、学生が衣料品の購入時に長持ちするものを選択したり、素材や混率を確認したりするようになった」と、イベントが若者の繊維リサイクルに対する認識や消費行動様式の変容をもたらしていると指摘する。
日本繊維機械学会の繊維リサイクル技術研究会は、繊維リサイクルに関する動画付き教科書『繊維リサイクルと私たちの生活』の編集も進めており、近日刊行予定。小学生から一般社会人まで対象とした内容とした。こうした取り組みを通じても、消費者の意識と行動様式を変容させることが繊維リサイクルの社会実装には欠かせないだろう。