寝具/ベトナムへ生産シフト/中国も引き続き存在感
2025年09月19日 (金曜日)
寝具の海外生産は、中国を軸にするが、ベトナムを中心に東南アジアへシフトする動きが目立つ。日系大手量販店が中国からの調達を切り替えており、日系素材メーカーや商社もベトナムでのモノ作りに対応する体制構築を進める。(長尾 昇)
財務省の貿易統計によると、主要アイテムの一つである人造繊維使いのふとんの2024年輸入数量は、中国が約88%を占める。中国製が圧倒的に多いが、地政学リスクなどによってベトナムの生産拠点としての位置付けが高まっている。さらにASEAN地域へ出店する日系量販店向けの供給拠点としても役割が増している。
東洋紡せんいのマテリアル事業部ライフマテリアルグループは、ベトナムで協力工場を活用し、改質加工わた、紡績糸の生産体制を構築している。綿が先行し、綿を改質して吸湿発熱機能を高めた糸「ホットナチュレネオ」が、国内の25秋冬向けブランケットに採用されたほか、ホットナチュレネオの吸湿性をより高めた有機綿タイプも26春夏向けインナーで採用されている。
得意とする改質技術を生かし、海外生産のコストメリットや現地供給能力を高めることで差別化する。ベトナムで改質レーヨンの量産体制もこのほど構築。日本で作る改質わたと同等の性能を持つ改質レーヨンを供給できる。吸湿性が高く、水分を蓄える改質レーヨン糸「リフレス」、ウールを超える吸湿性を持つ「スーパーリフレス」などを供給する。
寝装・インテリア企画製造のリュクス(大阪市西区)は、日本と中国に生産・物流拠点を持ち、企画から製造、検品、物流まで自社グループによる一貫体制を強みにするが、ベトナムのホーチミン近郊に、寝具のキルティングや縫製を行う生産拠点の開設を検討する。「ニーズの変化に対応し、ベトナムを含めてサプライチェーンを構築する方針で進めている」と話す。
粒わたや寝具、クッション製造などのアライ(京都市)のベトナム子会社、アライベトナムは、ASEAN地域の日系量販店向けビジネスが拡大する。
アライベトナムは、カード機や、コンフォーターを含めた縫製機器を持つ。23年には昇華転写プリント機も導入した。ASEAN地域の日系量販店向けは寝具、枕、カバーが中心。昇華転写プリントは、商社や縫製工場経由で主に受注し、日系のスポーツウエアのプリントなども手掛ける。さまざまな取り組みが奏功し、24年9月期売上高は前期比28%増収だった。特に拡大するベトナム国内向けは、45%増収。今期も増収へつなげる。
一方でベトナムはロット数が大きく、日系大手量販店や大手寝具製造卸以外は活用しづらい。そのため、小ロットに対応できる中国・山東省などのニーズも引き続き高い。中国は原料、素材から生産できる体制が整っており、寝具の生産拠点として「少なくともあと5年」(寝具関連企業)は中心になるとみられている。