ボーケン品質評価機構 海外事業本部/新たな価値創造に挑戦/今年で海外本格進出30年
2025年09月25日 (木曜日)
ボーケン品質評価機構が1995年に中国・上海に試験センターを開設して海外進出に挑戦してから、今年で30年を迎えた。中国だけでなく韓国や台湾、ASEAN地域などへと拠点が広がり、地域に根差したサービスを展開する。試験対象アイテムの拡大、機能性試験や化学分析への対応、品質支援業務の拡充など日系企業のグローバル展開に合わせて、ボーケンの海外事業も進化を続ける。
〈中国で試験内製化推進/柔軟な対応体制を構築〉
上海に試験センターを開設して以来、生産地の近くで日本と同等の品質・精度を備えた試験サービスをスピーディーに提供することに取り組んできた。やがて“チャイナ・プラスワン”の動きが強まり、日本の繊維産業が他のアジア諸国やASEAN地域での生産を拡大する中、ASEAN地域に拠点を広げている。
現在、中国は上海のほか常州、青島、広州、杭州に試験センター、大連、南通に事務所を構える。韓国、台湾、インドネシアのジャカルタ、タイのバンコク、ベトナムのホーチミンにも試験センター、カンボジアのプノンペンには事務所を置き、地域に根差したサービスを展開してきた。
中国の品質・技術力の優位性を背景に生産の中国回帰が続いており、回帰先も山東省を中心に華北・華東地域へと広がる。検査を中国で完結させる動きも加速し、製造から品質管理まで中国にシフトする傾向が強まった。
機能性の付与が定番化したことで海外拠点でも機能性試験の需要も高まる。中国法人である上海愛麗紡織技術検験、青島紡検検験、常州紡検検験で機能性試験の内製化を推進し、上海拠点では既に50項目以上の試験に対応している。SGSなど海外の検査機関との業務提携で試験を実施するASEANの拠点でも日本や海外での委託ネットワークを活用し、スピーディーな試験体制を構築した。
〈海外販売をサポート/教育・研修やQC監査も〉
近年、日本の繊維企業の多くが中国やASEAN地域での内販に力を入れる。内販には各国の法規制に従った表示などが不可欠。ボーケンは、海外のルールに準拠した表示内容の作成サービスを拡大した。特に多いのが日本向けの表示を対象国向けに変更するケース。アイテムも繊維製品のほか服飾雑貨、日用品など多岐にわたる。
中国では、日本市場向けの品質基準をベースにしながら中国製品標準(GB標準)を参照した品質基準作りをサポートし、中国内販に向けた品質管理を強化したいニーズに応える。中国や韓国の企業から日本進出に先駆けて、日本市場向け品質要求への対応を支援して欲しいという依頼も増えた。
近年、海外駐在員の縮小や新分野への参入が増えていることから、社内教育をアウトソーシングするケースが多い。ボーケンは海外でも日本と同様に新入社員向け「繊維入門セミナー」や生産地ならではの「品質・生産管理者向け研修」、海外販売を見据えた「基礎研修」など教育・研修サービスを実施している。依頼企業の要望に応じて内容もカスタマイズし、受講者の理解度を可視化してフィードバックの仕組みも導入したことで高い評価を得ている。
品質支援事業本部と連携し、海外での品質管理(QC)監査・改善サポートにも力を入れる。繊維・アパレル企業による雑貨や日用品分野への参入が増加しており、繊維製品に加えて雑貨・日用品を生産する工場へのQC監査の需要が高まる。監査結果に基づく改善指導など、継続的サポートの要望も多い。検品会社と協業し、生産ラインの抜き取り検品による不良品の原因分析サービスも実施する。
これまでは日本の企業からの依頼で海外工場のQC監査を実施するケースが多かったが、近年では中国の現地工場が自らQC監査を依頼するケースも増えた。工場が主体的に品質向上に取り組む姿勢を強めている。
〈生活用品の試験拡充/中国に加えASEANも〉
ボーケンは海外での生活用品関連の試験対応も拡充している。中国の3法人と広州、ベトナム・ホーチミンの拠点では家具、雑貨、日用品などの試験対応を強化した。
上海試験センターでは樹脂製品の耐熱・耐冷試験、食器の耐洗浄機試験、魔法瓶や傘の品質試験を開始した。青島試験センターでは、現地試験機関と共同でキャリーケースの各種試験、かばんやファスナーの試験を実施しており、家具試験の導入準備も進めている。上海試験センターと常州試験センターでは中国登録検査機関との協業で食品衛生法に基づく器具・容器・包装の中国国内検査サービスを開始している。
また、広州試験センターとホーチミン試験センターでは日本向けの日用品・雑貨・家具試験に加えて、米国BIFMA規格や欧州のEN規格に基づく家具試験にまで対応を拡大した。今後は耐切創性試験など個人防護具(PPE)の試験受付も準備している。
〈ASEAN地域を強化/広がる生産地と多様な製品に対応〉
ボーケンの海外事業本部は今後、中国に加えてASEAN地域での対応をさらに強化する。ベトナムのハノイやハイフォン地区に加えてカンボジア、ミャンマー、インドネシアのスマラン地区での試験受付など対応体制を強化する。
政府系試験機関やSGSとの協業を生かし、産業資材・玩具・プラスチック製品に対する試験対応も順次拡大する。海外でも生活用品分野の商品リスクチェックや表示確認サポートの体制整備に取り組む。中国華南地区やASEAN地域でのQC監査・改善指導への要望も高まっていることから、拠点での監査員の育成を進め、現地でスピーディーに実施する体制整備を進める。
各国がカーボンニュートラルに向けた目標を掲げ、企業のサステイナブル情報開示が進む中で、海外事業本部でも温室効果ガス(GHG)排出量の算定基準であるGHGプロトコルに対応できる人材育成を進める。デジタル技術の導入にも積極的に取り組み、システム導入やSNS活用で検査業務をオンラインで完結できる仕組みを整え、依頼企業と双方向の情報共有を強化する。試験の自動化設備も導入し、効率的な試験と品質保証サービスの信頼性向上を目指す。
〈執行役員 海外事業本部長 見座 宏昭 氏/グループの最前線を進む〉
当機構は1995年に上海に試験センターを開設して以来、30年にわたって海外拠点を通じて社会のニーズの変化に根差したサービスを展開してきました。現地スタッフの専門性や自立性も高め、海外事業本部全体で「お客さまと共同で品質保証を行うパートナー」という役割を推進するため、拠点運営の現地化を加速します。国内外の拠点を跨いで任務を遂行することで新たな価値創造につなげます。デジタル技術で企業を変革するDXなども推進し、ボーケングループの最前線を進むことでさらなる成長を目指します。(談)