特集 アジアの繊維産業(5)/カケンテストセンター/高度化図り全体で成長/試験機導入や納期短縮進める

2025年09月26日 (金曜日)

 カケンテストセンター(カケン)のアジア事業は、国・地域で違いはあるものの、2025年度上半期は、おおむね堅調な推移を見せている。紫外線遮蔽(しゃへい)性試験機の導入をはじめ、海外でできることを増やし、納期短縮にも取り組んでいる。各拠点で高度化が図られており、今後も全体で成長を目指す。

〈各国・地域おおむね堅調〉

 カケンの海外事業は、大きく東アジアとASEAN地域、南アジアで展開している。2025年度上半期(25年4~9月)はおおむね堅調で、中国は各拠点とも前年同期を上回り、ベトナムでは昨年10月に開設した子会社のMTVカケンベトナムが好調だ。バングラデシュも大幅な拡大を見せる。

 中国は、全体として機能性試験が増えているが、一般試験の需要も小さくない。各拠点の中でも上海科懇検験服務と上海科懇南通分公司、無錫試験室などが特に順調な動きを見せた。寧波試験室は営業力強化の効果、大連試験室は営業オフィス設置の効果が健在化し始めていると言う。

 ASEAN地域へのシフトが指摘される中国だが、「顧客の中国での生産は減っておらず、試験依頼にも影響はない」とする。中国は今後も重点を置く方針で、既存試験の強化や対応可能試験を拡充する。CSR監査も伸ばすとし、監査可能なスタッフを増やす。

 MTVカケンベトナムは、順調な立ち上がりを見せた。吸水速乾やUVカット、接触冷感、窒素酸化物堅ろう度、吸湿発熱、保温性などの各種機能性試験に対応できるという強みを発揮している。抗菌・防臭試験導入の準備を進めるなど、上海科懇検験服務に並ぶ拠点に育てる。

 南アジアでは、バングラデシュ試験室が好調な動きを持続する。できる試験項目を増やす方針で、紫外線遮蔽性試験を今秋に導入する予定。納期短縮にも力を入れており、「3泊4日が通常の納期だが、2泊3日で出せるモノを拡充していきたい」と話した。

 インドベンガルール試験室は、問い合わせ件数は増えているものの、試験依頼の拡大にはまだ結び付いていない。認知度向上に継続して力を入れる。

〈カケンインドネシア/試験と細かなサービスで〉

 カケンインドネシアは、インドネシアでは唯一の日系検査機関だ。国際的な検査機関が競合となるが、「日本企業ならではの細やかなアドバイスやサービスで差別化」(濱大介社長)する。強みを前面に打ち出し、成長を図る。

 下半期が落ちた2024年度は厳しい状況だったが、25年度は回復傾向が見え、4~8月は前年同期比微増で推移している。大手SPAからの依頼が獲得できているのが大きい。一般試験のほか、機能性試験では撥水(はっすい)やストレッチ、吸水速乾などの試験にも対応する。

 機能性試験では、4月に導入した紫外線遮蔽性試験が評価を得ている。従来から依頼があったが、日本に送って試験をしていたため納期が8~10日かかっていた。それを4日間に短縮したこともあって、試験依頼は昨年の約3倍に増えた。

 今後も需要がある試験は拡充やサービスの充実などで拡大を図っていき、年間でも前年を上回りたいとしている。

〈香港検査所/広東省開拓がポイント〉

 香港検査所では、大手SPAの試験依頼が増えている。日本に送らなくても日本と同等の試験ができ、「時間的な優位性が発揮できている」(五味光弘所長)ことが大きな理由だ。今後は、広東省エリアでの顧客の開拓・獲得が大きな課題となる。

 香港検査所の特徴は、ベトナムやカンボジア、インド、バングラデシュからの試験依頼を受けられることにある。近年は地産地消の観点からASEAN地域や南アジアからの仕事が減り、同検査所の試験依頼も減少傾向が見られるが、2025年上半期は前年同期比微増で推移している。

 機能性試験では、吸水速乾性や紫外線遮蔽性のほか、米国市場に販売している顧客からは可燃性試験の依頼も入る。提携先との連携を深め、有害物質の分析も増やしていく。

 広東省エリアの顧客獲得では「もともと香港検査所で試験していた顧客の復活」に力を入れる。また、カケンのインド、バングラデシュ拠点の教育という役割も担う。