特集 アジアの繊維産業(6)/わが社のアジア戦略/豊島/一村産業/QTEC

2025年09月26日 (金曜日)

〈海外各拠点の優位性生かす/豊島〉

 豊島は中国、香港、ベトナム、インドネシアに現地法人を置き、各拠点の優位性を生かす。販売だけでなく生産、品質管理、物流の効率化や改善に注力する。

 豊島国際〈上海〉は設立30周年を迎えた。蓄積されたノウハウを生かし、素材・製品部門が機能を拡張していく。原綿・原糸、生地、副資材などを広く扱い、製品まで一貫生産する総合力が強みだ。オリジナル原糸の特徴を生かした生地や製品を軸に、日本向けや中国内の市場開拓も推進している。

 品質管理の精度向上にも手を打つ。40人超の品質管理スタッフが工場への指導や検品業務に当たる。確かな品質を保つための具体的な施策を推進している。

 このほど、広州事務所を分公司に格上げした。上海、北京、青島を合わせて4拠点体制となる。広州や深センなど華南エリアの新規開拓を狙う。優秀な人材を確保するため、現地社員の採用も強化している。

 香港が拠点の豊島〈亜洲〉はセーターを日本や欧米へ販売する。ニット製品の一大産地としての優位性を生かし、ベトナムの工場で生産を行う。中国・日本・欧州連合(EU)の糸の情報を集積し、豊島本社の素材部門とも連携して高付加価値商材の開発も進める。

 東南アジアの現地法人も強みを生かす。TYSMインドネシアでは、素材部門は日系企業が主要顧客で、糸・生地を販売する。製品は日本向けを軸にユニフォームやスポーツ用途の供給が強みだ。素材は第三国への輸出拡大と、製品はライフスタイル商材を含めた包括的な提案を強化する。

 豊島ベトナムの素材部門は同国内に糸・生地を販売する。中国品と競合しない、差別化商材の開発と商流の構築を強化している。製品部門は日本向けカジュアル商品やユニフォームの生産が強み。インドネシアと同様、関連商材の提案強化に努める。

 品質生産管理や海外拠点担当の藪輝彦常務執行役員は「東南アジアの市場開拓を進める。鍵は現地人材の確保と育成だ」と話す。豊島国際が30年の歴史で蓄積した機能やノウハウを、ベトナムやインドネシア法人の運営にも生かしていく。東南アジアや南アジアでの原材料の調達力を高めて、地産地消による生産力を拡大する。

〈国内軸に5極体制深耕/一村産業〉

 一村産業(大阪市北区)は近年、“グローバルコンバーター”を掲げながら国内外でサプライチェーンの強靭(きょうじん)化に取り組んでいる。今後もリードタイム短縮を最優先の課題にグローバルサプライチェーンを作っていく。

 同社は北陸産地を軸とした国内をモノ作りや糸・生地開発をベースにしつつ、中国、インドネシア、ベトナム、インドで糸・生地生産の5極体制を敷く。中国・上海以外に自社海外拠点は持たないが、各国の協力工場へ技術者を派遣するなどで“日本品質”“一村品質”を構築している。

 中東民族衣装向けポリエステル短繊維織物の生産地として活用するインドネシア事業は上半期、ベトナムとのすみ分けを図る中で減少したが、他の3国は事業拡大が著しい。

 中でも法人を置く中国事業は、法人の上半期売上高が前年同期比50%増となるなど好調ぶりが際立った。一村産業本体への原糸・生機供給が大きく拡大した。内販は一般衣料の市況悪化を背景に2割ほどの減収となった。

 ベトナム事業は取扱高が11%増。糸から生機、染めまでの一貫体制を構築しており、中東向けとユニフォームの生産地としての存在感を高めている。

 5極目の生産拠点として選定したインドでは、ポリエステル紡績糸の量産体制が整った。「品位も高く、順調に軌道に乗ってきた」(竹内弘二繊維事業部門長)と拡販に自信を示す。ポリエステル長繊維の糸、織り、染めの本格生産にも着手し、来期から販売を本格化させる。

〈試験拡充や人材育成に成果/QTEC〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、アジアでのビジネスを着実に拡大している。対応可能な試験の拡充やサービス強化に加え、ナショナルスタッフ育成の成果も顕在化してきた。これらの施策は継続的に取り組み、海外事業のさらなる成長へとつなげる。

 2025年上半期(25年4~9月)は、ベトナムとバングラデシュの試験センターが順調な動きを示す。地道な活動によって顧客を獲得してきたのがベトナム試験センターだ。今年に限ったことではないが、制限物質の試験依頼などが増えている。

 また、ラボのスペースを約1・5倍に拡大した。どのような試験機を入れるかについてはまだ検討中としているが、積極活用で事業拡大を図る。好調に推移した上半期を受け、下半期も数字を確保したいとし、人員の拡充も視野に入れる。

 ダッカ試験センターは、堅ろう度や物性などの一般試験のほか、吸水速乾や紫外線遮蔽(しゃへい)、保温性などの機能性試験を導入している。既存顧客との取り組みが堅調であることに加え、日本向けを手掛ける中国企業の依頼も増えている。

 日本の検査機関としていち早く進出(10年)し、設立当初からのスタッフも在籍するなど、蓄えてきた知見が強み。納期短縮にも取り組み、人員を7人増やして48人体制としたほか、試験機も拡充する。

 中国は、各拠点で数字を伸ばしている。新規顧客の獲得などが奏功しており、上海総合試験センターでは、官公庁の制服関連で試験依頼が入る。そのほか、無錫試験センターで羽毛の試験が復調し、深セン試験センターでは雑貨関連が増えた。