独自ビジネスの構築急ぐ/在ベトナム日系繊維企業/欧米向けや内販など

2025年09月29日 (月曜日)

 日本のアパレル輸入で中国の次に多いのがベトナム。チャイナ・プラスワンの流れの中で、商社を中心に多くの日本企業が現地に法人などの拠点を設けてきた。新型コロナウイルス禍による一時的な足踏みはあったものの、各法人の売上高や取扱高は基本的に右肩上がりが続いている。直近業績も堅調から好調に推移するが、「既存事業ではこれ以上の拡大は望めない」という声がここにきて急速に上がり出した。

(吉田武史)

 早くから拠点を構え、現地で副資材供給体制を整えてきたのが、島田商事(大阪市中央区)のベトナム法人、島田商事ベトナムだ。高まる地産地消ニーズに対応して現地調達比率の向上にも努め、業績も右肩上がりが続いた。人員も拡大し、現在は工場スタッフ含め、ナショナルスタッフ約160人という大所帯になった。

 ただし、「来年以降は踊り場になってくる」と警戒感を表す。対日縫製品が、少子化や在庫回避への意識の高まりなどを背景にこれ以上の量的拡大が望めなくなりつつある。さらに、中国、台湾、韓国などの大手副資材企業がベトナムへの進出を加速させているためだ。

 同法人の売り上げの85%は対日縫製品向けで、残り15%は欧米向け。日本市場の縮小や競合激化を見越して「次の一手」を模索する中、法人が主体となった独自ビジネスの必要性を強く意識し、展示会出展などの種をまいてきた成果が15%という数字に表れている。

 伊藤忠商事グループのベトナム法人、プロミネントベトナムは、基本的に受け身の対日縫製品生産管理を「Aビジネス」、法人主体の独自ビジネスを「Pビジネス」と呼ぶ。現在の比率はAビジネスが8割、Pビジネスが2割だが、近年はPビジネスが増える傾向が顕著で、比率が逆転する日も近いとみる。

 Pビジネスの柱は、資本・業務提携する現地有力SPAなどからの縫製品OEM/ODMと、地場の生地商社や対日縫製工場への生地販売。資本力と先見性を発揮した幾つもの業務提携や、いち早くR&Dセンターを社内に設けるなどで独自の糸・生地を開発してきた成果が表れている。

 ヤギのベトナム法人、ヤギベトナムは対日縫製品のOEM/ODMの生産管理を行う傍ら、糸・生地・製品で独自ビジネスの開拓に本腰を入れている。グループの生地商社イチメン(東京都渋谷区)と協業して現地で生地の備蓄販売を始めたのも、独自ビジネスを拡大させるという方針の一環だ。

 日本のアパレル市場の縮小と現地での競合激化が不可避である中、法人が主体的に動く独自ビジネスが今後も広がっていくのは間違いなさそうだ。