シキボウ “成長への変革”の一丁目一番地
2025年10月01日 (水曜日)
シキボウは、ユニチカの連結子会社ユニチカトレーディング(UTC)およびその海外子会社が手掛ける衣料繊維事業の譲受に向け、統合の準備を本格化している。対象事業の売上高は直近決算期で約171億円に上る。鈴木睦人社長は「中期経営計画が掲げる“成長への変革”の一丁目一番地」と位置付け、事業のスムーズな統合に強い意欲を示す。
譲受対象には、ユニフォーム、寝装品、プリント各事業、シャツ事業の一部、さらにユニチカ〈北京〉貿易やUTCベトナム、UTCインドネシアにおける繊維事業・株式が含まれる。鈴木社長は「当社にとって平成以降最大規模の案件。この承継を成功させることがわれわれのミッション」と強調する。
最大の狙いは、長年の課題であった「海外販売力の強化」だ。これまでの海外展開は日本市場向けの生産体制が中心だったが、「海外での販売力を拡大しなければ、生き残れない時代に入っている」と指摘。生産主導から販売拡大へとかじを切る大きな転換点と捉える。
UTCの海外販売拠点が加わることで、既存の生産ネットワークと融合し、グローバル展開が飛躍的に強化される。今期(2026年3月期)から始動した3カ年の中計で掲げる「新規顧客・新規市場の開拓」に向けた体制強化にもつながる。
事業分野が、シキボウの得意とするユニフォーム、寝装事業と重なる点も大きい。技術やノウハウの融合によるシナジー効果に期待が高まっており、ユニチカの複重層糸「パルパー」など有力ブランドを自社の生産・販売体制に組み込むことで、提案力や展開力の一層の強化が見込まれる。
統合後は新会社を設けず、人的資源も含めてシキボウの繊維セグメントに一体化することを想定。21年から協業関係にあることから、「互いをよく理解しており、統合はスムーズに進む」(鈴木社長)とみる。営業・人事・総務など全社横断のプロジェクトチームも立ち上がり、26年1月の新体制スタートに向けて着々と準備が進む。
鈴木社長は「取引先からも『しっかりやってくれるのですね』という期待の声を多くいただいている。その期待に応える体制を整えていきたい」と話す。事業承継によって、シキボウの繊維事業は新たな成長フェーズへと踏み出すことになる。