不織布新書25秋(3)/ユニチカのSL事業継承/瑞光/再建ではなく事業拡大/製品を見通し商品開発/社長CEO 梅林 豊志 氏

2025年09月30日 (火曜日)

 衛生材料の製造設備メーカーである瑞光がユニチカのスパンレース不織布(SL)事業を承継する。異業種の瑞光が収益低迷するSLをどう生まれ変わらせるのか。梅林豊志社長CEOに事業譲受の背景と今後の戦略について話を聞いた。

  ――9月12日に、ユニチカとSL事業譲受の正式契約を結びました。改めて譲受に至った経緯を教えて下さい。

 当社は紙おむつや生理用ナプキンなど衛生材料の製造設備が主力ですので、材料であるスパンボンド不織布(SB)やSLには元々関心を持っていました。衛生材料でも昨今は世界的に環境素材を重視する傾向が強まる中で、製造設備だけでなく、材料から手掛けることができればビジネスの幅が広がると考えました。同業者ではありませんし、既存事業とシナジーを発現できると判断し、事業を譲受することを決めました。

 今回のユニチカのSL事業のほかにも、24年2月にCOTEX(岡山県倉敷市)を設立し、テイメン(同)からコットン製品の製造部門を買収し、医療用や化粧雑貨に使用する後晒しの脱脂綿も手掛けています。今年8月には防護服を原材料から製品まで一貫で自動生産できる設備を開発し、韓国企業に販売するとともに、出資も行っています。

  ――事業譲受契約は8月上旬を予定されていました。遅れた理由は何でしょうか。

 垂井工場はユニチカグラスファイバーの工場もあり各種調整に少し時間が掛かりましたが、良い形で着地できたと考えています。

  ――綿100%を中心とするユニチカのSLは収益が悪化していたとされています。どのように立て直しますか。

 仕入れ先や外注先、製造コストなどを見直します。数億円の設備投資も行う予定です。内部にいると分かりにくい部分があります。当社のような外部から見て、おかしいと感じる部分を見直すことでコストを抑えることは可能です。

 一例を挙げると、調達する綿花は輸送や保存のために圧縮され、工場で解きほぐし、混打綿機にかけますが、これで良いのかどうかなどを考えます。巻き形状もその一つです。

  ――綿100%SLはコンタミ(夾雑物)の除去がポイントで、生産性にも影響しますが、どう改善しますか。

 良い原料を使えばコンタミは少なくなります。仮に原料の仕入れコストが上昇してもコンタミ除去が減れば製造コストは下がります。そこまで検討すべきです。設備についても今はサーボモーターやテンションモーターも進化していますので、電子制御でコストを下げることができると考えます。

  ――垂井工場は昨年3号機を新設したばかりです。

 3号機は現状フル生産に近い状態と聞いています。老朽化する2号機は休止し、1、3号機でフル生産体制として、最終的には倍増の規模にしたいと考えています。

  ――事業拡大するための策は何ですか。

 衛生材料製造設備の販売先は欧米企業や中国企業が多いのですが、これらの企業にSLを輸出できる可能性が高いとみています。肌に優しい綿など天然繊維を使用する傾向は世界的に強まっています。すでに欧州ではパンティーライナーに綿100%SLを使っていますし、中国の紙おむつではフラッフパルプを使用せず、綿100%SLを使用しています。

 ユニチカのSL輸出は商社頼りだったようですが、当社は中国、ブラジル、イタリアに生産拠点を持ち、米国、ドイツ、タイ、インドネシア、トルコ、インドに販売・サービス拠点を置いて海外展開しています。これらを生かします。既に衛生材料設備の納入先からSLを供給できるかとの問い合わせもあります。

  ――子会社で被覆保護材も販売していますが、そこにSLを活用することもあり得ますか。

 原料から製品まで見通した開発を進めますので、用途は広がると考えます。出資した防護服の韓国企業へのSL活用も検討します。

  ――昨今は日本のSLメーカーの撤退が相次いでいます。

 SLメーカーは原反販売のみですが、当社であれば一気通貫で製品まで視野に入れた開発が可能です。もちろん、現有の商品、顧客は大切にしますが、新商品が生まれる可能性は高く、既に研究開発を進めているものがあります。これらを輸出に結び付けていきます。

  ――当初はCOTEXにSLを譲受する予定でしたが、本体に変更しました。

 製品まで踏まえた開発を強化する上で適していると判断したのが一つの理由です。営業、技術、開発を瑞光本社に集約し、試験機も移設する予定です。これにより新しい技術開発を進めます。

 当社は常にチャレンジしてきました。23年に上場区分を東証スタンダードから東証プライムに変更した際もそうでしたが、これまで難しい道を選んできたなと思います。今回のSLも挑戦ですが、期待してくれている企業は多いので、良い商品を安く、早く供給できるようにしていきたい。そのためには「今までのやり方が正しい」ではなく、変えていきます。事業譲受は立て直しではなく、事業を拡大するためです。5年、10年先を見据えてストーリーを描いていますので、いかにそのストーリーに乗せていくかが課題です。