不織布新書25秋(4)/東レ/MAL/フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン/帝人フロンティア

2025年09月30日 (火曜日)

〈東レ/「アートレイ」量産へ/メタ系アラミド繊維も活用〉

 東レの不織布・人工皮革事業部門は、新タイプのオレフィン系スパンボンド不織布(SB)「アートレイ」の量産を急ぐ。産業用を中心に用途開発が進む。また、韓国子会社のトーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア(TAK)が生産するメタ系アラミド繊維「アラウィン」を活用した高機能不織布の開発と用途開拓にも力を入れる。

 不織布事業の2025年度(26年3月期)は比較的堅調に推移している。ポリエステルSB「アクスター」は北米向けフィルター用途が関税問題でやや不安定だが、国内はフィルターのほかハウスラップなどの用途も堅調。構造改革を進めているポリプロピレン(PP)SBも「生産規模適正化で収益が改善しつつある」(赤江宏一不織布・人工皮革事業部門長)。紙おむつ向けもインドやインドネシアで需要が拡大した。

 ただ、SBは中国企業などとの競争が一段と激化していることから、高付加価値な新商品の開発と提案が不可欠になる。その一つが滋賀事業場(大津市)の独自設備で開発したアートレイ。高強度フラットタイプや高剛性・高通気のかさ高タイプのPPSB、ポリエステルとポリエチレンの2成分複合SBなどをそろえる。現在、量産化を進めており、産業用のほか包材などの用途でも開発が進む。26年度には売上高10億円を計画する。

 TAKで生産するアラウィンを活用し、湿式不織布を含めた高機能不織布の開発にも取り組む。26年度上半期には試験機の稼働も予定する。アラウィンは乾式紡糸のため、湿式不織布でも強度が出る。こうした特性を生かし、複合材料基材など新規用途の開拓に取り組む。

〈MAL/利益重視で産資を強化〉

 三井化学と旭化成のスパンボンド不織布(SB)合弁、エム・エーライフマテリアルズ(MAL、東京都中央区)は、紙おむつなど衛生材料向けで合理化を進める一方で、利益率の高い産業資材向けの拡大を図る。産業資材の売上高比率は現状20%だが、これを50%に高める。

 主力の衛材は合理化効果が表れてきた。三井化学系、旭化成系のタイ子会社2社の管理部門を一本化するとともに調達、物流とも合理化を進める。国内製造子会社も競争力がない一部設備を休止しており、銘柄統合を含め「合理化計画にはめどが立ち、実行する」(草野和也社長)。同時に通常品に比べ目付を約20%落とせる中空SBは旭化成系のタイ子会社の親水加工SBに応用。年内に発売する。

 産業資材はポリ乳酸SB「エコライズ」やポリエステルSMS「プレシゼ」(SBとメルトブロー不織布の複合品)で食品資材、メルトブロー不織布は電子材料向けフィルターを強化。付加価値が取れる差別化品に集中し伸ばす。

〈フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン/建材用途を拡充/「ドリップストップ」本格販売〉

 フロイデンベルググループのフロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン(大阪市中央区)は、主力のポリエステルスパンボンド不織布(SB)に加えて、新規開発商材の拡販を進める。特に建材分野に力を入れる。

 2025年度上半期(1~6月)は、主力のSBがカーペット基布向けで安定していた。ユニチカがSB事業をセーレンに売却することもあり、ユニチカ品のユーザーの一部が調達先を切り替える動きがあることも追い風となったようだ。

 こうした中、力を入れているのが建材分野を中心とした新規商材の拡販。屋根防水材向けポリエステルニードルパンチ不織布「ドリップストップ」は、建材としての販売に必要な不燃材認定が来年夏までには取得できる見通しとなっており、認定取得後は販売の本格化が期待できる。3次元構造体「エンカ」も屋根材での販売が始まったが、さらなる用途開発に取り組む。そのために開発人員を増強した。

 また、フロイデンベルググループのメーラーテクノロジーズが、ターポリンなどコーティングテキスタイル製造販売のハイテックスの中核事業を買収し、メーラーハイテックスとなった。これを受けて、フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパンとしてもターポリンなどコーティングテキスタイルに関連する開発にも注力する。

〈帝人フロンティア/短カットを増産/汎用ゾーンは輸入わた活用〉

 帝人フロンティアの産業資材部門短繊維素材本部は、好調が続くポリエステルショートカットファイバー(短カット)を増産する。生産拠点であるテイジン・ポリエステル〈タイランド〉(TPL)の設備増強が完了した。また、汎用(はんよう)ゾーン向けは商社機能を生かして輸入わたの活用で量的拡大に取り組む。

 ポリエステル短カットは、2025年度(26年3月期)に入っても好調な販売が続く。膜支持体向け湿式不織布用が主力だが、前年度までやや需要が鈍っていた米国市場でも流通在庫の調整が進んだことで販売が回復した。

 TPLの生産能力増強も完了し、下半期(25年10月~26年3月)から約10%の増産となる。堀田敏哉短繊維素材本部長は「高付加価値品はメーカー機能を一段と強化する」として、設備増強の効果で販売量・売り上げ規模の拡大を目指す。その上で次の能力増強に向けた検討も進める。

 一方、そのほかの不織布用ポリエステル短繊維は車両用途が例年並みながら、寝装や生活資材用途に勢いがない。高付加価値品への特化を進めたことで収益力が高まった反面、販売量の減少が続いていることも課題だ。このため車両、寝装、生活資材など各用途の汎用ゾーンに向けて商社機能を生かした輸入わたの活用を進める。

 不織布原反は今期から揖斐川事業所(岐阜県神戸町)に生産を集約した縦型不織布「V―Lap」で車両用途を中心に新規開拓を進める。特にカーシートのワディング材などでウレタン代替として需要開拓に取り組む。