不織布新書25秋(5)/旭化成/丸三産業/ダイワボウレーヨン/フタムラ化学
2025年09月30日 (火曜日)
〈旭化成/スリット糸を次の柱に/衣料、手芸糸、雑貨など〉
旭化成は2025年からキュプラ長繊維不織布「ベンリーゼ」のスリットヤーン「Bembreez」(ベンブリーズ)の本格販売をスタートした。
ベンリーゼは24年に事業化50周年を迎え、今年から次代に向けて新展開を始めた。既存用途が成熟期にある中で「次の成長分野、新エリア開拓でポートフォリオを転換する」(森嶋誠ベンリーゼ営業部長)ことが基本戦略で、成長分野の一つがBembreezになる。
9月に開催された世界最大級の服地と副資材の国際展「インターテキスタイル上海アパレルファブリックス2025秋冬」でも同社ブースで紹介し、注目を集めた。Bembreezは競合するスパンレース不織布にはできない商品であり、紙糸に比べてソフト性が高く、衣料だけでなく、手芸糸、雑貨などにも展開する。
スリット、撚糸、販売を担う1社である中国のファンシーヤーン製造、ベストシャンの簡明照董事長兼総経理も「新商品が求められる中で、Bembreezのようなものはないと中国や欧州企業から評価を受ける」と今後の拡大に太鼓判を押す。
ベンリーゼは世界唯一の不織布で生分解性があり、不純物が少なく、長繊維のため短繊維SLに比べて毛羽の発生も少ない。そのほか、吸液性・保液性、密着性、透明性も高く、制電性、耐熱性、摩擦によるダメージが少ない特徴がある。工業用ワイパー、医療用ガーゼ、フェースマスクが主力だが、Bembreezは国内外で次の柱として期待する。
一方、新エリア開拓では東南アジア、欧州、インド、アフリカ、南米などを攻める。一昨年に国内、海外の2担当制に変更。グローバルで成長を目指す体制にも変えた。
〈丸三産業/SLと共同開発を強化/晒し綿など加工技術磨く〉
丸三産業(愛媛県大洲市)は晒し綿などコットン加工原料、綿100%スパンレース不織布(SL)、各種不織布製品などを製造販売する。主力の晒し綿などコットン加工原料は国内外のSLメーカーを中心に供給するが「日本の綿100%SLメーカーが大きく変化する中で、需要家の海外販売も視野に入れながら、共同開発する体制をより強化する」(渡邊秀幸取締役営業本部長)方針だ。
綿100%SLは綿花に含まれるコンタミ(夾雑物)の除去が課題で、生産性にも大きな影響を与える。このため、日本では同社が加工する高品質で、各社の仕様に応じた晒し綿を使用することが多い。「その技術力に磨きをさらに掛けて、他社に比べて一歩先を歩む」とする。
同社は自社に設備4系列を保有しSLも販売するが、晒し綿も含めて特に海外販売にも注力する。米国向けは関税の影響を受けるが、担当者も増員しながら、欧州、東南アジアの開拓に取り組む。
同時に後加工によるSLなど不織布に機能性付与し、新用途を開拓することも課題。機能性を持つコットン加工原料の開発も進める。
同社は今期(2026年年2月期)から中期5カ年計画をスタートした。収益改善とそれに連動する輸出拡大を基本方針とする。新中計開始前には採算改善に向けた値上げを順次実施。25年2月にはMCT西条(愛媛県西条市)、UMCT(同)など6社の子会社を吸収合併するとともに、資本金を1億9千万円減の1億円に減資した。
〈ダイワボウレーヨン/機能レーヨンを海外へ/大和紡績とも連携して〉
ダイワボウレーヨンは機能レーヨン短繊維の海外販売に力を入れる。生産能力が限られる中で、採算面で厳しい定番品の比率を抑えながら、機能レーヨン短繊維を海外で拡大する。
特に不織布向けでは衛生材料用・化粧雑貨用の乾式不織布向けと、湿式不織布用ショートカットファイバーの輸出に注力する。親会社である、大和紡績の国際販売室と連携しながら「当社にしかできないものを世界へ発信する」(本谷浩昭営業部長)考えだ。
レーヨン短繊維だけでなく、大和紡績との連携により不織布や不織布製品も供給できる強みを生かす。
同社は抗ウイルス、撥水(はっすい)、phコントロール、防炎、難燃などさまざまな機能レーヨン短繊維を開発、販売してきた。また、使用済み綿製品を原料として再利用した「リコビス」、海水中生分解性も確認した「エコロナ」など環境配慮型のレーヨン短繊維を数多くそろえる。
2025年度上半期(4~9月)は販売量は横ばいながら、製造コストの上昇から採算面で厳しい状況が続く。原燃料高騰に伴う価格転嫁が追い付いていないためだ。
中でもボリュームを稼ぐ定番品はレーヨン短繊維だけでなく、レーヨン短繊維を使用した不織布、さらに不織布製品の安価な輸入品が増加するなど、競合は厳しい。
その中で、競争力を強化するために、益田工場(島根県益田市)では設備更新も予定している。
〈フタムラ化学/「TCF」から撤退〉
フタムラ化学(名古屋市中区)は湿式セルローススパンボンド不織布「TCF」から撤退する。2026年3月末で大垣工場(岐阜県大垣市)での生産を休止する。事業継続には設備更新に多額の投資が必要だが、コスト上昇分の価格転嫁で販売量が減少し、再投資しても採算が厳しいと判断した。
TCFは世界唯一の湿式短繊維スパンボンド法によるもので1979年に旧三菱レイヨンから特許・設備を譲受し、事業開始。低目付品の地合が良く、強度がある。制汗シート、フェースマスク、ガーゼ・シーツなどのメディカルなどが主力で、現在は86年導入の3号機のみで年産2400㌧(公称)の規模。今後は環境配慮型不織布「ネイチャーレース」(年産1200㌧)に集中する。ネイチャーレースは「大垣法」と呼ぶ独自技術によるもの。イオン液体でパルプを溶解し製造したセルロース繊維を製造し、水流交絡で不織布化する。TCFに比べて価格は1・4倍。