不織布新書25秋(6)/旭化成アドバンス/三景/小津産業/タピルス/呉羽テック/一村産業/蝶理/DAFS
2025年09月30日 (火曜日)
〈旭化成アドバンス/海外市場に直接提案/「ラスタン」で欧州市場攻略〉
旭化成アドバンスの繊維本部繊維資材事業部は、海外市場への直接提案を強化する。そのために人員も増強した。また、欧州市場も耐炎繊維「ラスタン」不織布で攻略を進める。
2025年度上半期(4~9月)は一部特需があった関係で売上高、利益とも堅調に推移した。ただ、「特需を除くと、市況は良くない」(名和洋二繊維資材事業部長)。特にスパンボンド不織布(SB)は韓国向けの携帯カイロ用が暖冬や中国品との競争激化で勢いがない。北米向けのコーヒーフィルターやブラインドなどの用途も米国の関税政策の影響で勢いが鈍化した。ただ、こちらは流通在庫の整理が進めば市況も回復するとみる。
このため今後は海外市場に対する直接アプローチを強化する。北米市場は米国子会社の旭化成アドバンスアメリカと連携し、主力のコーヒーフィルター、ブラインド用途に加え農業資材や衛材など他のアイテムに提案を広げる。中国や韓国市場も「フィルター用途などで拡大余地が大きい」として担当人員を増強した。
欧州市場にも力を入れる。こちらも担当人員を増やした。SBなどに加えてラスタン不織布で弱電や鉄道車両用途での受注獲得を目指す。欧州の鉄道車両用途での採用に向けて欧州連合(EU)内の標準規格(EN規格)による不燃認証も取得可能となった。国内の鉄道車両用途での実績を欧州でも生かす。
〈三景/資材・包装材の供給増える/風呂敷以外に、楽器なども〉
不織布製包装材・業務用風呂敷製造卸の三景(名古屋市北区)は、資材や包装材の供給が増えている。スパンボンド(SB)製を中心としたお節料理向け業務用風呂敷の受注は微減も、スポーツ用品や楽器などの包装材の受託や製造依頼が相次ぐ。
前期(2025年5月期)は微増収も減益だった。減益はベトナム子会社(三景マニュファクチャリングベトナム)への先行投資増が主因。ベトナム子会社は26年の稼働を目指す。電子機器の包装材を生産・供給する予定で、3人の従業員を雇用済み。さらに現地スタッフを増やす予定。材料を縫合する設備を導入し、量産に向けた準備を急ぐ。
足元の商況は堅調に推移する。産業資材や農業資材向けの受注が増え、レストランで使用する子供用エプロンやだし取り袋の販売も伸びる。新たに高級アパレルやバッグなどの包装材を受託するなど、領域が広がる。
包装材に求められる傾向も変化している。生分解性や再生原料など、環境配慮型の原料を使用した包装材の開発・製造依頼が増える。袋状に縫合する技術として、バイオマス由来原料でラミネート加工をする依頼も増加している。
大安工場(三重県いなべ市)はフル稼働が続く。生産面で協業する企業との連携を深めつつ、安定した品質の商材を提供するため、さらなる生産管理と品質管理の強化を図る。倉澤寛社長は「世の中に役立つ商材を提供することに全力を注ぐ」と話す。
〈小津産業/コンシューマー分野で新商品/おしり拭きなど発売〉
小津産業は、新商品開発の強化に取り組んでいる。コンシューマー分野(一般消費者向け)では、半年に2商品の市場投入を目標に掲げており、今月にトイレに流せるウエットシートと通気性を訴求したマスクの販売を開始した。トイレに流せるおしり拭きは、今後の市場拡大が見込まれ、同社も拡販に手応えを示す。
新商品の「ケアウィル シャワートイレ代わりのウエットシート」は、温水洗浄便座を代替するウエットシート。温水洗浄便座が普及する一方で、衛生面での不安などから外出先では使用しない人も多いといわれる。潜在需要はあるものの、現状は大手メーカー1社の独占状態になっており、参入の余地があると判断した。
シートは、厚手の水解性不織布製を用い、使用後はそのままトイレに流すことができる。携帯用40枚入り(20枚入り2パック)とし、既存商品と比べて1枚当たりのコストパフォーマンスを高めている。女性をメインターゲットとし、パッケージデザインにもこだわっている。
マスクの「DewAir 息らくらく3D不織布マスク」は、通気性に焦点を当てて開発した新製品だ。微小粒子捕集効率99%やバクテリア飛沫(ひまつ)捕集効率99%、ウイルス飛沫捕集効率99%などを確保しながら高通気を実現しているのが特徴となっている。ともにドラッグストアなどで展開する。
〈タピルス/中計は計画通りのスタート/海外販売拡大がポイント〉
メルトブロー不織布(MB)を製造・販売するタピルス(東京都港区)は、2025年度(25年12月期)から3カ年の中期経営計画に取り組んでいる。上半期の1~6月はほぼ計画通りだったとし、下半期以降についても計画に沿って着実に施策を進める。
現中計は、既存ビジネスの強化、新事業の開拓、経営基盤の強化の三つを柱とし、最終年度には利益を新型コロナウイルス禍前の水準に回復させる。用途や分野によって差はあるものの、25年度はおおむね堅調な滑り出しとなった。
一次電池用セパレーター関連は、新型コロナウイルス禍で落ち込んだ需要が回復し、液体フィルター用途も数量面で復調が見られた。コーヒーフィルターやワイパーなどは苦戦した。
伸長を見せるのが海外で、下半期以降もポイントになると捉える。中国では、大規模通販サイトのウェブ展示会に出展し、上海の不織布関連展示会(12月)にも出展する。26年春にドイツで開催されるフィルター関連展への出展も検討している。
そのほか、差別化品の開発やタイ子会社の強化などを進める。国内の伊勢原工場(神奈川県伊勢原市)は開設から時間が経過し、中計期間中に今後の道筋を決める。
〈呉羽テック/独自製品で用途開拓〉
ニッケグループの呉羽テック(滋賀県栗東市)は、接着性スパンボンド不織布「ダイナック」など独自製品の新規用途開拓に力を入れる。一方、自動車内装材は国内生産拠点を再編する。
今期(11月期)は在庫圧縮などで収益改善に取り組んでいる。また、自動車内装材は河瀬工場(滋賀県彦根市)での生産を今期末で停止し、本社工場に集約する。自動車のエンジンフィルターは湿式不織布との競争が激化しているが、ここにきてハイブリッド自動車のバッテリー冷却システム向けフィルターの販売が伸びた。また、貼付剤基布も堅調だ。
このため今後は貼付剤基布やハイブリッド車用フィルター、ダイナックなど独自製品による用途開拓で収益向上を目指す。また、米国子会社のニッケ呉羽アメリカは自動車用エンジンフィルターの現地販売から撤退する。今後は同じニッケグループのエフアンドエイノンウーブンズの不織布「ヒメロン」の備蓄販売拠点として活用する。
こうした取り組みで今期での黒字浮上を目指す。
〈一村産業/不織布関連で倍増へ〉
一村産業は不織布を活用したビジネスを拡大する。現在はスパンボンド不織布(SB)を使用した、建材用の透湿防水シートが主力だが、透湿防水フィルムとのラミネート加工技術や加工体制を生かして自動車、医療、農業資材にも広げる。
大嶋秀樹社長は「量を倍にするのは難しいが、質を高めながら新規用途を開拓し、不織布関連の売上高で倍増を目指す」と意気込む。透湿防水シートを手掛ける住宅資材事業部門と繊維事業部門が連携した農業資材の開発も進んでおり、現在は3年間の実証実験中。本格化に期待する。
透湿防水シートは25年前から手掛ける。東レのポリエステルSBをメイン基布にしながら国内外から調達、ラミネート加工は日本と中国で行う体制を構築する。地域密着型の直販体制を敷く断熱材など各種住宅資材の販売ルートを生かして拡販してきた。
現在では国内シェアトップとしており、透湿防水シート以外も含めた不織布関連の売上高は約30億円と言う。
〈椿本興業/加工度高め付加価値化〉
機械商社で不織布など産業資材も手掛ける椿本興業(東京都港区)は、不織布の加工度を高めるとともに東南アジア子会社を活用した海外販売に力を入れる。
同社のテクノマテBD東日本第一営業部不織布課は不織布や加工品、一部不織布製品を販売する。原反販売は売上高の約40%。フィルム、樹脂原料・成形品、その他資材も手掛けるが「より付加価値を高める」(中村信一郎課長)ことを基本方針とする。
「新規の顧客、市場を開拓し柱を育成するのが課題」とし、新市場ではメディカルや生活資材の開拓に取り組む。加工委託する協力工場と連携し、できる限り製品に近い形での供給に注力する。
海外販売は「日本製が重視される可能性がある東南アジアの開拓を進める」としている。
〈DAFS/防護、滅菌包材を強化〉
旭・デュポンフラッシュスパンプロダクツ(DAFS、東京都千代田区)は、米デュポンのフラッシュ紡糸不織布「タイベック」で防護服や医療滅菌包材に力を入れる。新型コロナウイルス禍に供給が滞った建材用はルクセンブルクの新設備稼働で供給体制が整ったことから挽回を目指す。環境対応も力を入れ、全用途で開発を進める。
同社は1995年にデュポンジャパンと旭化成の折半出資により設立され、今年30周年。タイベックはポリエチレン製の独自不織布。
〈蝶理/羽毛代替不織布を開発〉
蝶理はこのほど、羽毛代替不織布「トリクモ」を開発した。ポリエステルスパンボンド不織布(SB)に特殊なシワ加工を施したもの。既に販売を始めているが、シワ加工は他の不織布に応用可能なことから用途に応じた開発を進め、拡大を目指す。
同社は繊維本部資材事業部の資材部で不織布関連ビジネスを手掛けるが「マーケットイン型の課題解決」(髙橋晃一資材事業部長)を基本とし、技術者を採用して開発を強化するとともに、加工度を高めた製品の供給にも力を入れる。
開発強化による成果の一つがトリクモになる。加工度を高めた製品供給では、建材用に透湿防水フィルムとの張り合わせを行うほか、ワイパー向けで特殊な不織布原反を供給する。同時に「需要家からの要望もあることから、国内の加工メーカーと連携し製品での供給も少しずつ始めている」と言う。ボリュームが大きい衛生材料向けは不織布に加え、通気フィルムも力を入れる。