不織布新書25秋(7)/FANS/倉敷繊維加工/ダイニック/金井重要工業
2025年09月30日 (火曜日)
〈FANS/リサイクル事業が稼動/「ヒメロン」は海外拡販〉
ニッケグループのエフアンドエイノンウーブンズ(FANS、大阪市中央区)は、来期(2026年11月期)に向けて主力の不織布「ヒメロン」の海外での拡販に取り組む。また、リサイクル事業もこのほど設備の試験が完了し、商業稼働がスタートした。
今期はここまでほぼ計画通りに推移しているが、下半期に入ってから、やや勢いが鈍化した。「自動車向けのヒメロンは“トランプ関税”への懸念から、自動車メーカーのモデルチェンジが後ろ倒しになっている影響が大きい」(近藤浩行社長)と指摘する。OA機器向け不織布も最終製品在庫が増加していることが背景にあるようだ。一方、工業用不織布・フェルトは堅調に推移し、バグフィルター用原反は国内販売が安定する。楽器用フェルトは市況の低迷が続いている。
使用済み繊維製品の再資源化に取り組むリサイクル事業は石岡工場(茨城県石岡市)への設備導入と試験運転が完了し、9月から商業稼働を開始した。まずは一関工場(岩手県一関市)で生産する不織布の原料に活用する。
来期に向けては「大型投資の成果を具体化させることが重要」と強調。リサイクル事業は7月から本格稼働となる計画で、そのために再生原料によるボードなど商品開発と用途開拓に取り組む。また、インドネシア子会社のFANSインダストリーインドネシアの設備増強が完了したことを生かし、OA機器向けで拡販を進める。
ニッケグループの呉羽テック(滋賀県栗東市)との連携でヒメロンの海外販売拡大に取り組む。呉羽テックの米国子会社でヒメロンの備蓄販売を5月から開始した。これによりタイ子会社のFANSプレシジョン〈タイランド〉、中国子会社の芳珠精密加工〈深セン〉と合わせて3拠点で備蓄販売する体制が整った。
〈倉敷繊維加工/半導体関連用途に期待/「クラングラフト」本格販売〉
クラボウグループの短繊維不織布メーカー、倉敷繊維加工(大阪市中央区)は、今期から半導体関連用途に向けてグラフト重合加工による金属イオン捕集フィルター「クラングラフト」の本格販売を開始した。引き続き高付加価値品の拡販を進め、収益力の向上を目指す。
2025年度上半期(4~9月)は主力の自動車キャビンフィルターや空調フィルターが堅調に推移。中国子会社の佛山倉敷繊維加工も欧州系フィルターメーカーからの受注が堅調だ。
こうした中、繊維に放射線など高エネルギーを照射してさまざまな機能材を分子的に結合させるグラフト重合加工を応用したカートリッジフィルター、クラングラフトの販売が本格化した。薬液に溶け込んだごく微少な金属イオンを捕集する機能を生かして、半導体製造工程などで使用する高純度薬液の精製用途で提案を進めてきた結果、ここにきて正式採用が決まりつつある。
このため今期から売上高、利益を営業計画に組み込む。半導体関連分野の活況が続いていることから、米澤秀次社長は「ユーザー企業からの評価は高い。今期はまだ小さな売上高・利益計画だが、これから倍々のペースで拡大させていきたい」と期待を寄せる。
まずは半導体関連の薬液メーカーに向けた販売からスタートするが、将来的には半導体メーカーや半導体製造機メーカーへの提案も視野に入れる。韓国や台湾の半導体関連企業への提案にも取り組みたい考えだ。
〈ダイニック/中計に沿って確実に前進/次の3年は成長ステージへ〉
ダイニックは、2025年度(26年3月期)が中期経営計画の最終年度になる。不織布製品は、2年目の前年度第2四半期以降、自動車分野で厳しさが続き、今年度もまだ完全には戻っていないとするものの、計画に沿って確実に前進する。その上で、次の3年を成長のステージとする。
不織布製品は、自動車関連を除くと健闘する。フィルター関連は家電用途が復調し、展示会・イベント用カーペットも今上半期は数量、金額ともに前年同期を上回った。建材分野も堅調な動きを維持した。原料価格や労務費上昇の影響を受けたが、体質改善を進めた。
中計最終の今年度は、ビルや工場の空調を中心とするフィルター分野の拡大をポイントに挙げる。ラインアップの見直しや販売価格の適正化などに取り組んだ結果、利益改善につながった。今年から差別化品を中心に拡販し、売上高に貢献したいとしている。
空調フィルター分野は、今年度だけでなく、来年度からの新中計での成長にも期待する。「業界の再編もある今が好機。当社のシェアはまだ小さく、少しでもシェアを高めたい」とした。他社との協業も活用し、二次加工で付加価値を高め市場開拓を図る。
〈金井重要工業/研磨ホイールが本格化/品質の向上へ改善継続〉
短繊維不織布製造の金井重要工業(大阪市北区)は、2025年度下半期(25年10月~26年3月)からプリント基板用研磨ホイールを本格化する。従来、研磨材向けは不織布で供給してきたが、加工度を高めて製品として販売するもの。設計から量産まで一貫生産で、繊維径や研磨粒子・樹脂量などニーズに応じた開発の強みを生かした。
25年度上半期は微増収で利益も改善する見通し。コスト上昇分の価格転嫁が進んだのが主因だが、販売量は自動車内装材、空調フィルター、研磨材、不織布タワシなどの生活資材とも前年同期を下回った。
下半期も研磨材は「長期的に半導体は成長産業だが、直近は低迷しており、量的には厳しい」(源野佳郎取締役不織布事業部長)とみるが、研磨ホイールは拡大を見込み、採用先を広げる。
同時に、不織布製造所(兵庫県宝塚市)では、品質向上を図る。これまでも改善を図ってきたが、さらに品質の安定性を高める。一方、原料価格をはじめコスト上昇が想定されるため「コストアップ分は価格転嫁するしかない」としている。