紡拓会の「TEPP」(1)/台湾素材を世界へ発信/地場デザイナーとのコラボで

2025年10月01日 (水曜日)

 地場デザイナーと協業した“サステイナブルファッション”とともに、台湾素材を世界へ――。「繊維品のマーケティング推進およびビジネスチャンスの開発計画」(略称TEPP)を推進する台湾の繊維産業連合会、紡拓会は9月23日、台北市内で国内外のメディアを集め、台湾素材を使った地場デザイナーの作品発表会を開いた。(台北=岩下祐一)

 紡拓会は、台湾の経済部(経済産業省に相当)から委託を受け、台湾素材の輸出拡大を目指すTEPPを推進している。その一環で今年は、地場デザイナーと台湾素材のコラボレーションに取り組んでいる。9月23日の記者発表会では、「RECODE2050」をテーマに6人の地場デザイナーが台湾素材を使って生み出した作品を発表した。

 今年のTEPPには、台湾を代表する素材メーカーおよび生地商社計19社が参加。ナイロン大手の力鵬(リーポン)や、丸編み地の旭寛(シューグァン)、コーヒーかすを再利用した独自素材「S.Cafe」(Sカフェ)で知られる興采(シンツァイ)など、機能性を持つサステ素材を得意とする大手メーカーが顔をそろえた。また、UVカット機能糸「サンモア」使いの編み物を手掛ける崇躍(エリック・テックス)や、カカオの殻を使ったポリエステル長繊維「セカオ」で知られる佳紡(グランデテックス)など、独自素材を展開する生地商社や中小メーカーも名を連ねている。

 「RECODE2050」の発表会には、エレガントなニットウエアを得意とするブランド「GIOIA PAN」(ジョイア・パン)の潘怡良デザイナーや、台湾の歴史文化からインスピレーションを受けた作品が評価される「UUIN」(ユーユーアイエヌ)の劉子超デザイナーなど、6人が参加。いずれも各社の機能性を追求したサステ素材を使って、ファッション性の高い作品を完成させた。

 台湾素材はこれまで、サステと機能性の双方を強みとしてきた。今回はこれに、地場デザイナーの感性を組み合わせ、“台湾発のサステイナブルファッション”として訴求する新しい試みだ。素材の輸出拡大だけでなく、地場デザイナーズブランドの知名度向上や、素材一貫の製品ビジネスの拡大にもつながる可能性がある。

 紡拓会は14~16日、台北南港展覧館で素材と機械の見本市「台北紡織展」(TITAS)を開く。その会期中の15日に同会場で、今回の作品を発表するランウエーショーを開催する。世界中からTITASに集まったバイヤーに向けて、台湾発のサステファッションをお披露目する。

〈代表インタビュー/海外バイヤー60社誘致へ/紡拓会副秘書長 楊暁琴 氏〉

  ――TEPPの概要を。

 台湾の繊維品輸出は、輸出総額の約5%を占めます。世界トップ10にランクインする繊維輸出国で、特に機能素材は国際市場で高いシェアを持っています。ただしこれはあくまで、台湾からの直接輸出です。多くの企業が海外生産していることを考慮すれば、その影響力はさらに大きいです。

 TEPPは、この重要な繊維品輸出をさらに伸ばすため、経済部(経済産業省に相当)が15年前に始めたプロジェクトです。

  ――具体的な活動内容は。

 以前はわれわれ(紡拓会)が台湾企業を率いて海外展示会に出展したり、直接海外のブランドを訪問していました。しかし今年は、海外バイヤーを台湾に招聘(しょうへい)することに舵を切りました。昨年までは年間約30ブランドを招聘していましたが、今年はその倍の60ブランドを目標にしています。

 (9月23日に開いた成果発表会の)「RECODE2050」は、過去とは一線を画す内容です。従来はセミナー形式が主でしたが、今年は生地企業と国内のデザイナーをマッチングさせ、作品を制作して発表する形式にしました。

 この背景には市場の変化があります。かつて台湾メーカーは海外ブランドからの大ロットの受託がメインでしたが、近年海外ブランドのニーズが小ロット・多品種へと変化しました。これに対応するメーカーと、(小ロットを求める)台湾のデザイナーとの間で、協業への機運がかつてなく高まっています。

  ――日本市場の開拓の現状は。

 日本企業との商売は以前、エージェントが入ることが一般的でしたが、近年は日本の商社やブランドが直接、台湾メーカーと商談したいという意向を強めています。商売を増やすチャンスと捉えています。

 台湾メーカーは、欧米ブランドと良好な関係を築いています。これを生かし、日本の商社、台湾メーカー、欧米ブランドの三者間での新たな協業モデルの構築の可能性も今後探っていきたいです。