繊維ニュース

ジーンズ製造卸など/自社栽培で差別化/ビジネスの確立目指す

2025年10月08日 (水曜日)

 繊維製品の製造業などで、自社で栽培した原材料を用いて製品の差別化・高付加価値化を図る動きが具体化しつつある。製品の独自性や希少性に加え、ユーザーが原料の育成や収穫に関与できる体験要素や社会貢献など、有形無形の価値を組み合わせ、ビジネスとしての確立を目指す。(酒井 要)

 ジーンズ製造卸のサムライジーンズ(大阪市北区)は9月29日、自社農園「サムライコットンファーム」(兵庫県丹波篠山市)で綿花の収穫祭を開いた。招待されたユーザーや関係者約60人が参加し、コットンボールを収穫した。同社によると、作付面積は約3千平方メートルで、収穫量・綿花の質ともに前年を大きく上回ったと言う。

 収穫量の拡大により、自社栽培綿花を使う製品も増やしている。全量を自社産とするには時間を要するが、将来的には「原材料からの日本製」を目指し、海外市場やインバウンド向けにも訴求を進める。

 近隣にはデニム製品の製作体験工房や直営店などを集積した施設「ササヤマコットンベース」も今春に開業。綿花畑での体験や地域観光資源と連携したツアービジネスの確立も視野に入れる。

 村田製作所のグループ企業であるピエクレックス(滋賀県野洲市)は、ポリ乳酸(PLA)由来の繊維素材「ピエクレックス」を軸に、循環インフラ「P―FACTS(ピーファクツ)」の構築を進めている。

 当初は素材から発生する電気を抗菌などに活用する機能性を訴求していたが、近年はPLA由来の生分解性に着目。ピーファクツを通じ、使用後の繊維製品を回収し、農業用堆肥としての再生に注力している。

 ピーファクツ参加メンバーはメーカーズシャツ鎌倉(神奈川県鎌倉市)や成願(大阪府泉南市)などの繊維製造業をはじめ、教育機関、食品・外食産業など多岐にわたる。16日には滋賀県守山市内の同堆肥を使った綿花畑で収穫祭を開く。

 この畑は同市とメーカーズシャツ鎌倉が協働で進める実証実験の一環で、育成状況は良好。収穫された綿花はメーカーズシャツ鎌倉の製品で採用される予定だ。

 デザイン事務所のアトリエメイ(大阪府枚方市)は自家農園ではないが、河川に自生するヨシを国産原料として繊維製品に活用している。

 2021年に淀川・鵜殿地区のヨシを繊維化する手法を確立して以降活動を本格化、23年に一般社団法人ヨシオープンイノベーション協議会を発足した。参加する自治体や企業が水辺環境の保全、循環型社会の確立、地域ブランド形成などを進めている。

 大阪・関西万博ではヨシ由来の原料が建築資材やユニフォームに採用されるなど用途が広がり、2~10日には特許庁が万博内で開いた展示イベント「明日を変える知財のチカラ」で同協議会の活動が紹介された。

 また、ヨシを炭化させた「ヨシ炭」や、粗目織物による包装資材・壁紙などの用途開発も進み、産業としての確立と定着を目指している。