繊維ニュース

クラレ繊維カンパニー 独自素材で新規開拓

2025年10月09日 (木曜日)

 クラレは、中期経営計画の最終年度となる2026年度(12月期)に向けて強みである独自素材を生かした新規用途開拓に力を入れる。

 坂本和繁常務執行役員繊維カンパニー長は、原材料費や用役費の上昇が続く中、設備の維持・更新も続けながら繊維事業を維持するためにも「“適正価格”での販売が一段と重要になる」と強調する。

 25年度の繊維カンパニーの商況はほぼ計画通りに推移しているもよう。ビニロン繊維はセメント補強材を中心とした建材用途、自動車のブレーキホース向けなどゴム資材用途ともに欧州市場に勢いがない。ウクライナ紛争の影響で建築需要が伸び悩んでいることが要因。人工皮革「クラリーノ」も欧州向けが低調だが、主力のシューズ用途は新規案件の獲得など好材料も増えてきた。

 高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」は資材用途が主力のため国内外市場ともに堅調が続く。メルトブロー不織布も堅調。面ファスナー「マジックテープ」は北米向けに勢いがないものの、国内市場は回復基調にあり、欧州向けはバックコート剤不使用のポリエステル100%品など独自製法による環境配慮タイプの販売が伸びている。

 中計最終年度となる26年度に向けて坂本繊維カンパニー長は「これまで実行してきた付加価値の高いマーケットで事業を展開するという戦略を徹底する」と話す。強みである独自素材を武器に新規用途開拓に力を入れる。

 既にベクトランでアウトドア用リップストップ生地用途への提案を進めているほか、ビニロン繊維も難燃素材として海外市場を中心に提案を進めた。クラリーノも製造工程で溶剤を使用しない新製法「クラリーノ・アドバンスド・テクノロジー・システムズ」(CATS)による環境配慮タイプの拡大を進める。

 また、繊維事業は老朽化した設備も少なくないことから「設備の修繕・更新コストを確保できるだけの利益が不可欠」として、適正価格での販売による収益性向上を重視する。そのためにも「適正価格での販売が可能な付加価値を作っていくことが重要になる」との考えを強調した。