繊維ニュース

商社/素材提案に表れ始めた独自色/製品OEMの差別化につなげる狙いも

2025年10月09日 (木曜日)

 独自素材の提案を強化する商社の動きが活発化している。自ら生地開発に乗り出す体制を整えたり、既存の事業で培ってきた強みを生かしたブランド戦略を推進したりするなど、各社の取り組み内容にも特色が表れ始めた。

(強田裕史)

 田村駒は、特殊なポリエステルフィラメントを使用した生地のブランド「ポリネックス」の提案を開始した。同素材は、天然繊維のような触感をもたらしながら、ポリエステルフィラメントによって速乾、防シワ、抗ピリングといった機能性を発揮。イージーケアと肌触りの良さを両立させた。

 経糸にストレッチ性の糸を使用した品番をそろえ、スポーツやアウトドアに向けて提案する。さらに経糸の一部に導電糸を取り入れた品番も加え、静電気対策を施すワークウエアへの採用も狙う。

 同社は、ポリネックスのような製品のOEM/ODMの差別化につながる独自素材を拡充する方針を打ち出す。4月には、組織横断的な素材開発を主導する「テキスタイル開発チーム」を立ち上げた。同チームは現在、接触冷感や防透け、遮熱、紫外線対策の機能を持たせた〝スーパーフルダル〟素材の開発を進める。

 MNインターファッションは5月、Stotz&Co.AG(スイス)、大和紡績との合意のもと、高密度綿織物ブランド「ベンタイル」の海外と国内の商標権を取得した。以降、受け継いだ供給網を生かしながら、多様な分野で新規需要の開拓に取り組んでいる。

 ベンタイルは1943年、英・マンチェスターで誕生した。長期間にわたり、英国空軍のユニフォームに採用されてきたことでも知られる。

 MNインターファッションはこの20年間、ベンタイルと同じ英・マンチェスター発祥の合繊の高密度織物「パーテックス」を販売してきた。そこで培った高密度織物の開発力や海外販売ネットワークを活用し、国内外でブランド展開を推進する。

 〝素材の天然回帰〟の需要に応えながら、合繊を取り入れた素材も提案に加え、品ぞろえを拡充した。

 蝶理は、ピン仮撚糸「SPX」を差別化素材の中核に位置付け、海外展開を視野に入れたブランディングに力を注ぐ。北陸産地の協力工場内に最新のピン仮撚り機を導入し、供給体制を整えた。

 SPXは、蝶理が北陸産地の工場との連携で作り上げた機能性糸で、ストレッチ性に加え独特の膨らみや軽量感を併せ持つ。

 今後は、日本の技術力を前面に出したブランディングで海外にも販路を広げながら、北陸の工場では糸の開発にも取り組み、技術の発展による産地の再活性化も目指す。