ごえんぼう

2025年10月10日 (金曜日)

 「それは言葉のあやで」と、けんかや失言の際によく使われる「言葉のあや」というフレーズ。言い訳がましいイメージだが、本来は異なる▼元々は言葉を巧みに操り、美しく多彩に表現する技法を指す。「あや」は漢字で「綾」と書き、綾織りに由来する。3本以上の経糸と緯糸を複雑に交差させて立体感や陰影のある模様を表し、織り方の種類も多い綾織り。言葉も組み合わせや比喩、言い換え次第で豊かな表現を生み出すという意味だ▼誤用される言葉は多い。例えば「うがった見方」は「疑った見方・ひねくれた見方」ではなく、「物事の本質を捉えた見方」。「失笑」は「思わず笑ってしまうこと」で「笑いも出ないほどあきれる」ことではなく、「姑息」は「一時しのぎ」で卑怯など悪い意味はない▼ネガティブな方へ勘違いする傾向が気になる。時代とともに変化する言葉。誤用のされ方に、世相が表れているのかもしれない。