ITMA ASIA+CITME シンガポール2025/アジア繊維産業の未来を切り開く/持続可能性軸に技術革新

2025年10月14日 (火曜日)

 世界の繊維機械メーカーが一堂に会する「ITMAアジア+CITME シンガポール2025」が、28~31日、シンガポール・エキスポで初開催される。7ホールを使った総展示面積7万平方メートルの会場に、30の国・地域から800社以上が出展。3万人規模の来場者を見込む。

 繊維機械の国際展は4年ごとに欧州でITMAが開催され、その前後の年に上海でITMAアジア+CITMEが開催されている。これまで空いていたITMAの中間年にシンガポール展が加わったことで、ITMAを冠した繊維機械展が毎年開催される形になった。

 ITMAアジアは第1回(2001年)と2回目(05年)がシンガポールで開催されたが、CITME(中国国際繊維機械展)との合同展になってからは上海で2年ごとに開催されてきた。シンガポール開催は20年ぶりになるが、その間に東南アジアや西アジア市場が成長してきた中で、新しい展示会として期待が大きい。今後も将来に向けた新技術・コンセプトの発表は欧州のITMAが主体になるとみられるが、今回のITMAアジアでは実ビジネスに沿った新技術が多く発表される見通しだ。

〈環境負荷低減も大きな見どころ〉

 近年、EUを中心に強化される環境規制、責任ある生産体制に対する需要の高まりを背景に、繊維製造分野では持続可能性対応が最優先課題となっており、南アジア、東南アジア、中東各国でも政府が産業の高度化・近代化を積極的に推進している。

 今回展では、無水染色技術や省エネルギー型機械、循環型生産モデルなど国際的規制要件を満たすと同時に、コスト削減や収益性向上に直結するソリューションが一堂に会する。他方でデジタル化、自動化、AI活用による効率化や環境負荷低減に関する展示ももう一つの大きな見どころだ。

 展示は繊維の各分野を網羅する19セクターに分類され、来場者が効率的に目的分野を探索できるように構成されている。高額な投資判断となる繊維機械では、最新機器を稼働状態で直接確認し、複数の機種を比較検討できる場として注目を集めている。

 来場者が繊維機械の専門家と直接交流・対話し、それぞれ異なる生産現場の課題に即した具体的ソリューションを相談できる点も魅力だ。同展は、厳格化する持続可能性要件への対応に向けても、効果的・効率的な設備投資計画に良い機会となる。

〈新選針機構の両面機/薄地ジャカード製造可能/福原産業貿易〉

 丸編み機の福原産業貿易は、最新のコンピュータージャカード機「M―LEC7KS」を実機展示する。

 M―LEC7KSは新開発の選針機構を採用し、シリンダー側が3ポジションのダブルニット電子柄編み機。従来機の36ゲージをさらにファインゲージ化した40ゲージタイプを出品する。

 同機ではシルクのような生地の肌触りを持つ薄地のジャカード生地を製造できる。機械本体もコンパクト化、省エネ化を実現しており、操作も簡易化している。

 ブース全体では、従来の「ITMAアジア+CITME」のブースイメージを継承しながら、今回は「和」のコンセプトを強調。「メード・イン・ジャパン」をアピールし他社との差別化を訴求する。

 同社は丸編み機の精度・性能・機能性を高め、顧客満足度の向上に取り組むことで差別化を図る戦略。さらに省エネ化、省人化などコスト削減を目指した丸編み機の開発も課題とする。

〈仮撚りの次世代機を展示/TMTマシナリー〉

 TMTマシナリーは、仮撚り機の次世代機「ATF―G1」を展示する。低床・コンパクトな機台レイアウト、新型ヒーターによる省エネ化、高生産性を可能とする多段ワインディングなど各面を進化させた機種で、生産機をイメージできるR/L両側40機は初出展となる。

 プロモーション映像で、自動化の提案も進める。クリールロボットとPOYステーションの組み合わせによる仮撚り機へのPOYパッケージ供給、自動化設備のほか、未来の合繊工場の姿を映像を使って提案する。

〈アイコンで多彩に実演/村田機械〉

 村田機械は自動ワインダーの最新機種「AIcone」(アイコン)を展示する。生産性、操作性、省エネ性を追求して開発した機種で、アラームが出にくい機種としても好評を得る。

 今回展では新たに加えた2シュートタイプを展示する。両面にバーティカルコンベアを配置し、ボビンシュートを二つ準備することでボビン供給可能本数を最大54本(毎分)に拡大した。

 展示品は1台にドラムタイプとトラバースタイプを混載し、実演を行う。

〈540センチ幅のガイドレス式/タッカーを自社開発に/イテマ〉

 イテマ(イタリア)は、超広幅のガイドレス式レピア織機や新開発のメカニカルタッカー、中国製の新型エアジェット織機などを初披露する。

 ガイドレス式のレピア織機はこれまで360センチまでで、それ以上はガイド付きで対応していたが、レピアヘッドなどの進化で540センチ幅を開発した。会場では中国製「ガリレオRX」での展示になるが、イタリア製の「R9500エヴォ」でも可能。

 日本でも産業資材用を中心にガイドレス式で4メートル幅以上を要望する声が上がっているため、展示会後に提案を進めていく。

 装置では、R9500エヴォに新開発のメカニカルタッカーを搭載して実演展示する。タックインの装置はこれまで他社製を搭載していたが、イテマ製で新たに開発した。これまで400回転を超える領域では、ランニングコストや品質などの面で対応が難しかったが、イテマ純正装置にすることで、より高速回転にも対応できる形にした。

 R9500エヴォでは、ミミの片側をなくして製織できる「iSAVER」(アイセーバー)を搭載したデニム用機も展示する。

 日本での販売は今のところ予定していないが、中国製ではエアジェットの新機種「ガリレオAX」を初披露する。イタリア製「A9500」の廉価版で、買いやすい価格を実現している。

〈AJLで新型機を披露/ウルティマックスも展示/ピカノール〉

 エディーが日本の総代理店を務めるピカノール(ベルギー)は、レピア織機とエアジェット織機を2台ずつ展示する。人工知能(AI)を活用したデジタルサービスも見どころとなる。

 エアジェット織機では、「オムニプラスiコネクト」の新型機を初披露する。「エコブースト」設計による省エネ化などを実現している。

 レピア織機では最新機種「ウルティマックス」でコーティング織物の実演を行うほか、中国製レピア織機「スーパーマックス」のジャカード搭載機(380センチ幅)を展示する。バンデビーレ(ベルギー)のブースでもジャカード搭載のウルティマックスを展示する。

 レピア織機、エアジェット織機ともに対応するデジタルソリューションも見どころの一つ。ブースでは、デジタルツール・サービスのプラットフォーム「ピコネクト」でのAIを活用したアプリケーションを初披露する。

 エディーが代理店を務めるメーカーでは、LGLエレクトロニクス(イタリア)も出展する。欧州製のフィーダーを幅広く展示する中で、省エネを実現した新モデルも展示される予定。

〈最新機種を日本で提案/視察ツアーも好評/伊藤忠マシンテクノス〉

 今回のITMAアジア+CITMEシンガポールでは、伊藤忠マシンテクノスが日本での販売を担う繊維機械メーカーも多く出展する。閉幕後は各メーカーの出展動向をまとめ、日本市場に適した機種を紹介していく。

 織機関連では、バンデビーレグループのボーナス(ベルギー)が大口の電子ジャカード機を展示する予定。日本で試作用織機が幅広く使われているCCI(台湾)も、サンプル織機関連の新機種を出展する。

 染色仕上機では、プンカン(韓国)、ペンテック(イタリア)などが出展する。

 自動化の面から注目されている設備では、ザーム(ドイツ)がポリエステル用のワインダーを展示し、アドバンテージ(台湾)が日本でも好評を得るノズルの自動検査装置、ビアンコ(イタリア)が自動測長、裁断、巻取りの「マニフィカ」などを展示する。ホットメルトラミネートのモンティアントニオ、インクジェット捺染機のレッジャーニも出展する。

 ITMAやITMAアジアでは毎回、日本からの視察ツアーを実施しているが、今回は約50人が参加する。視察ツアーにはさまざまな産地・業種から参加するため交流の場としても好評を得ており、来年の上海展や27年にハノーバーで開かれるITMAでも企画する予定。

〈ドローイングの新機種/AWCの機能向上/ストーブリ〉

 ストーブリは今回展で、自動ドローイング機やドビー機の新機種を披露する。うちドローイング機は来年から日本市場への販売も始める予定。

 自動ドローイング機の最新機種「サファイアプロS37」を今回展で展示する。七つの機能を進化させており、例えば生産性は毎分250本(現行機種はS32で230本)に高まる。

 画像処理能力を向上し、2本取りなどのトラブルを防ぐAWC(アクティブワープコントロール)機能を向上させた。モノフィラメントやモール糸など特殊な糸の初期条件設定を効率的に行える機能も付与している。

 オートドローイング機は市場環境が厳しい中でも堅調に推移している。人手不足への対応として注目を高め、太い糸を扱う産業資材用途でも引き合いが増えている。2026年の販売に向け、ITMAアジア後に日本市場でも新機種の提案を進めていく考え。

 ドビーは、ストーブリ中国製の新機種として1628型を発表する。中国製1551型は1000回転に対応するが、1628型は1200回転に性能が向上する。欧州製に比べると性能は落としているが、買いやすい価格設定でコンパクトな仕様にしている。日本市場での販売は予定していないが、中国やアジア市場を中心に展開していく予定。

〈SG型を実機展示/新水洗機構の最新機種/日阪製作所〉

 日阪製作所は今回展で、液流染色機「サーキュラー」の最新機種「CUT―SG」を実機展示する。節水につながる新水洗機構を搭載した新機種で、大容量化による低浴比化や生産性向上も実現している。

 日本では節水や省エネにつながる液流染色機の提案に力を入れており、近年は新水洗機構を搭載した機種を重点的に提案している。SG型は新水洗機構を搭載したSQ型に続く最新機種で、大容量化で低浴比を実現した「CUT―ZR」を基に新水洗機構を搭載している。節水や低浴比化に加え、大容量による生産性向上や、新水洗機構で生産品の品位向上につながる点も訴求する。

 日本ではSQ型に続いてSG型の導入も進みだしているが、海外での本格販売はこれからになり、今回展が初披露となる。ブースではSG型の実機展示に加え、自動走行補正システム「ACCS」や各種オプションなども紹介する予定。

 今回展では、インド、東南アジア、中国、日本などをターゲットに提案を進める。特にインドは今後の拡大を狙う重点市場の一つに位置付けており、ポリエステルやナイロン、スパンデックス混など合繊向けを中心に、品位や品質を重視する企業に向けて提案を進めていく。