ユニフォーム業界の風を読む(4)/東洋紡せんい 営業本部ユニフォーム事業部長 山本慎太郎氏
2025年10月16日 (木曜日)
市場の“二極化”“多様化”に順応
――上半期(4~9月)を振り返ると。
前期(2025年3月期)の大型別注の反動で売上高は減少しましたが、計画通りに着地し増益を確保できそうです。売り上げ拡大よりも資本の効率化を重視しており、構造改革が軌道に乗り始めています。
価格改定の浸透や為替の影響もありますが、何より収益性が高いニット素材へのシフトが進んだことが大きい。売り上げ構成を見ると、リードタイムが短く在庫効率も良いニットが2~3割まで高まっています。
――販売でけん引している素材は。
物性面で織物に近い編み地「コンフォネックス」です。スポーツ向け素材「スクラムテック」をユニフォーム用途に転用したもので、縦横50%以上に伸びる高いストレッチ性を持ちながら、スナッグやピリングへの耐性を強化しました。その機能性が評価され、今期(26年3月期)は前期比1・5倍の販売を見込む好調ぶりです。
一方、織物では工業洗濯対応のストレッチ素材「オールフレックス」が食品工場やメディカルに向け堅調に伸ばしています。こうした差別化素材は、現在では売り上げ全体の約4割を占めるまでに成長しています。
長期化する夏季に対応し、軽量・高通気でありながら耐久性やハリ・コシを維持する素材や、需要が高まる裏綿タイプの開発にも力を入れています。
――製品OEMも強化しています。
コンフォネックスのような伸縮性の高い生地は従来工場での縫製が難しく、品質の安定化が課題でした。そのため、生地供給から縫製まで一貫管理する製品OEMへの転換を進めています。中核はベトナムの自社工場・東洋紡ビンズンで、監査対応の品質体制を整備してます。卸売ライセンス取得により、日系企業向けの“地産地消型”ビジネスも展開し、協力工場と連携して最適なサプライチェーンの構築を進めています。
――下半期の方針は。
高付加価値素材の拡販と、それを支える製品供給体制の強化を両軸に事業を推進します。来年2月のベトナム国際見本市「VIATT」への出展を継続し、素材開発力と生産背景を組み合わせた提案で新たな販路を開拓します。通期では減収を見込みながらも、増益は確保していきます。
ユニフォーム市場は今後、“二極化”と“多様化”が一層進むとみています。高付加価値品と価格重視品の差が拡大し、従来のユニフォームの枠を超える製品が増えてきました。こうした変化に対応するため、丸編みやトリコット、ポリエステル、天然繊維など、多様なニーズに応える柔軟な開発体制を維持していきます。
(毎週木曜日に掲載)