三河産地/新たな挑戦で商機つかむ/発信強化や製品販売など展開
2025年10月16日 (木曜日)
多彩な用途の繊維製品を製造・販売する愛知県蒲郡市を中心とする三河産地。総じて苦戦を余儀なくされているものの、新たな挑戦で商機を見いだそうとしている企業がある。発信の強化や消費者向けの製品販売、海外への展開に取り組むことで活路を見いだす。
(川口直康)
三河はカーテンをはじめとしたインテリアやファッション衣料、三河木綿を使った寝具寝装品、多重ガーゼ、自動車などの産業資材向けといった多種多様な品目を手掛ける。これまで培ったノウハウを生かし、独自のモノ作りに長けた企業は多い。
一方で、商況は厳しい。幅広い品目のため企業によって濃淡はあるものの、全体的には苦戦を余儀なくされているのが現状だ。衣料や寝具、カーテン向けなど生活に関わる製品が多く、物価高による消費者の購買マインド低下に直結するためだ。
半面、ビジネスチャンスをつかもうとする各社の意欲は高い。さまざまな品目を扱うだけに各社の取り組みも三者三様だ。
染色加工の積水ナノコートテクノロジー(愛知県蒲郡市)は11月に東京で開かれる「Tokyo Textile Scope」(東京テキスタイルスコープ、TTS)へ初出展する。独自のナノ金属コーティング技術「masa」(マサ)をアピールする。
マサは半導体を製造する際に用いる、金属の薄膜を作る技術「スパッタリング」を応用して開発した。真空にした装置内で金属材料にプラズマをぶつけることで空気中に金属分子が超高速で飛散する。その上を生地が通ることで金属分子が堆積し、ナノサイズの超薄膜ができる。
網戸やエアコンフィルター向けなどの加工が先行するが、近年はスポーツ・アパレル向けも増えてきた。金属の膜厚を変えることで光の吸収と反射を制御する技術を開発し、多彩なメタリックカラーも可能となり意匠性を高めた。TTSでは用途を問わず発信に力を注ぐ。
寝装品製造卸の公大(同)が進めるのは海外クラウドファンディング(CF)への挑戦だ。既に台湾のCFで販売実績はあるが、このほど米国のCFも始めた。三河産の5重ガーゼケットを扱っており、14日時点で450万円以上の支援を受けるほどの好調ぶり。鈴木公輔社長は「三河木綿を世界に発信する足掛かりになった」と話す。
同社は国内で2種類のCFへ年間12回ずつ出品するなど、CFが事業の柱に成長している。今後は台・米でそれぞれ年間2回ずつの出品も視野に入れる。
三河の産元、森菊は製品ブランド「AFFINITY」(アフィニティ)の提案に力を入れる。川下に近いビジネスで消費者へのアプローチを強めるのが狙いで、6月からネット販売を始めた。消費者への直販ブランド設立は初めての試みだ。
タオルブランケット、フェースタオル、タオル地を使ったトートバッグの3種類を打ち出している。ブランドの立ち上げやデザインは若手社員が担った。市川喜英社長は「若い人材が活躍できる会社風土になれば」と語る。