韓国学生服メーカー/日本進出の糸口探る/高水準のMCに商機
2025年10月17日 (金曜日)
韓国の大手学生服メーカーが、日本市場への進出を模索している。K―POPアイドルに代表される“韓流”ファッションへの関心の高さを追い風に、高水準で推移している日本の制服モデルチェンジ(MC)を商機として捉える。一方で、深刻な少子化により国外に活路を見いださざるを得ないといった事情もある。(甘利昌史)
韓国の学生服市場は、4大ブランドの「エリート」「スマート」「アイビークラブ」「スクールルックス」がシェアの約7割を占める。いずれも流行を敏感に取り入れたデザインと、アイドルなどを起用した華やかなマーケティング戦略が強みで、若者に人気のファッションアイテムでもある。
エリートブランドを展開するヒョンジエリートは、学生服をはじめ、ワークウエア、スポーツウエアを手掛ける総合アパレル企業。このうち学生服関連の直近売上高は575億ウォン(約61億4千万円)で業界トップクラスだ。中高校生制服だけでなく、小学校やインターナショナルスクール向けもカバーする。
今月初め、MC件数が高水準で推移する日本市場への足掛かりを得るため、展示会「FaW TOKYO(ファッションワールド東京)」に出展した。自社ブランドの展開と並行して、実績のあるOEM/ODM受注も視野に入れ、販売代理店やメーカーをパートナーに迎えての展開を探る。
製品については「自由度の高いファッション性、生徒の感性の反映、そして安全快適性の3点を重視している」とし、トレンドを大胆に取り入れたデザインが特徴。体にフィットするスリムなシルエットや従来のブレザーの代わりにパーカを採用するなど、制服をファッションとして楽しむスタイルを提案する。
韓国の少子化問題もあり国外市場の開拓を急ぐ同社は、2016年に中国学生服市場に現地企業との合弁会社を通して進出している。中国では韓国デザインへの関心の高まりを背景にプレミアム学生服として急成長しており、25年までの目標として掲げていた売上高300億ウォンは早々に達成した。日本市場においても17年に菅公学生服の「スイートティーン」ブランドと協業した実績がある。
東海エリア拠点の学生服販売店イトウ(愛知県小牧市)は、23年にスマートブランドとの協業制服を立ち上げた。鮮やかな黄色が特徴の「カラシ制服」などで知られる人気ブランドだ。日本で学生服の納品遅れが社会問題化した際にラインアップ拡充の一環として取り扱いを開始。現在は愛知県長久手市の中学校で採用されている。
通常の制服をベースに、成長速度に合わせて調整できる袖口やウエストアジャスター、内側縫製へのこだわり、スマートシルエットの裾といった機能面を中心に差別化を図る。同社では「販売開始から好評を得ており、今後も着実に広げていく」との方針を示す。
学校指定制服として採用されるには、品質基準や安定供給体制といった高いハードルを越える必要がある一方、ジェンダーレス制服や私服の導入といった多様化も進む。韓国制服は、レンタルで街歩きや写真撮影を楽しむサービスなどで認知を広げつつある。今後、日本市場独自の商習慣に溶け込めるようなら選択肢の一つとして浮上する可能性は十分ある。