香港大手繊維メーカー/高度化と生産地再編/量から質にシフトし成果
2025年10月21日 (火曜日)
長期化する米中対立を背景に、香港の大手繊維メーカーが製品の高度化と生産地の再編を進めている。市況は厳しいが、量から質にシフトする各社の業績は、いずれも健闘する。
(岩下祐一)
縫製大手の晶苑集団(クリスタル・グループ)の2025年1~6月業績は、前年同期比2桁%増収増益だった。中国生産のコスト高と欧米ブランドの中国生産離れに対応し、ベトナムとバングラデシュ生産の拡大にいち早くかじを切ったことが功を奏している。
生産アイテムは、ジーンズやインナーに加え、16年ごろからスポーツ・アスレジャー分野を成長の柱と位置付けてきた。これが当たり、欧州スポーツや北米ヨガウエアブランドとの取り組みを拡大中だ。
将来を見据え、事業構造の変革を続ける。23年にはASEAN地域の編み物工場を買収、生地の自社開発・生産を加速した。自社開発比率を将来6割に高める構想を持つ。
エジプトへの進出も決めた。「地元政府との協議を進めており、2、3カ月以内に工場建設地を決める」と、羅正亮CEOは説明する。
東レが出資する香港の丸編み地大手、互太紡織(パシフィック・テキスタイルズ・ホールディングス)の25年3月期業績は、米国向けがけん引し、前期比増収。利益は、ベトナム工場が台風被害を受けたことが響き、前期並みだった。
同社は中国・広東省番禺と、ベトナム・ナムディン省およびハイズオン省の計3工場で量産体制を構築。ハイズオン工場では、欧米向けの差別化した合繊素材を生産し、販売単価が上昇傾向にある。
生産アイテムは元々、インナー中心だったが、この数年アウター用途を大幅に拡大した。現在は、アウター用途が全体の6割を占める。
新規のホームテキスタイルも好調。中国本土のホテルチェーン向けの丸編み地と経編み地の販売を伸ばす。
同じく丸編み地大手の福田集団(ファウンテンセット)は今年、3年連続で黒字を確保するもようだ。付加価値素材の開発と生産拠点のアップグレードに取り組み、日系大手SPAとの商売を拡大した。
スリランカ合弁工場は、月産300万ヤードのインナー向けの合繊編み地を生産。高機能素材の量産拠点で、高稼働率を維持する。今後400万~500万ヤードに拡大する計画を持つ。
日系大手SPAを中心に手掛ける縫製会社、永泰製衣(ウインタイ)は、カンボジア生産を拡充する。「ASEAN地域の中で、カンボジアの競争力が最も高い」と、鄭文徳総経理は述べる。
日系大手SPAとの商売は30年以上に及ぶが、高難度製品で高評価を得て、現在も取り組みは拡大している。省力化設備の導入と歩留まり改善で生産効率を高めていることや、技術教育に注力していることも顧客から認められ、市場開拓につながっているとみられる。