特集スクールユニフォーム(1)/変化する学生服業界

2025年10月22日 (水曜日)

 ここ数年活発だった制服モデルチェンジ(MC)の動きは、来春は若干落ち着きを見せる見通しだ。それでも各社にとって安定納品は引き続き重要課題となる。また、制服リユースのニーズの高まりなど業界内の環境変化への対応も迫られる。

〈来春はMCに一服感〉

 2020年ごろから中学校を中心に制服をブレザーへと刷新する動きが広がっている。この要因は性的少数者(LGBTQ)への配慮だ。性差のはっきりとした従来の詰め襟とセーラー服から、男女で共通デザインのブレザーへとMCする動きが全国的に進んできた。

 ニッケの調査では25年度入学商戦のMC校数は722校。過去最多となった23年の748校、2番目に多かった24年の735校に次ぐ数字で、引き続き高い水準を維持した。

 活発だったMCの動きは若干落ち着きつつある。生徒数の多い都市部ではほぼ完了し、「生徒数ベースで約7割が終わった」との声も聞かれる。ニッケによると、26年度入学商戦に向けて制服MCを予定する学校数は中学・高校合わせて517校になる見通しだ(9月末時点)。

 ただ、00年から19年までMC校数が150~300校台で推移していたことを考えると依然として高い水準にあるといえる。今後は「各県の第2、第3の都市でMCが始まっていく」(トンボの藤原竜也社長)ことが予想されるほか、「中学校で制服が変わったので、伝統ある公立校や私学などでMCを考える動きがある」(明石スクールユニフォームカンパニーの柴田快三専務)とみられる。

〈価格改定進み利益改善〉

 あらゆるコストが上昇する中、学生服メーカー大手3社を中心に各社はこの間、価格の改定を進めてきた。

 トンボでは「契約期間で伸びているものもあるが、7割ほど完了した」(藤原社長)。菅公学生服も「業界全体で値上げを行ったことで利益面に大きく貢献した」(尾﨑茂社長)ほか、明石スクールユニフォームカンパニーも「想定していた価格改定の数字に近い所まで単価を上げることができた」(河合秀文社長)など、価格改定が進み、利益面はある程度改善された。

 ただ、コスト上昇は継続している。「またお願いしていかなければならないことになる」(菅公学生服の尾﨑社長)といった声や、「昔のように5年や10年で1回の値上げだとおぼつかなくなる」(トンボの藤原社長)との指摘もある。

 入学商戦での安定供給を重視するために備蓄生産を強化したほか、制服の別注化が進んだことで各社の在庫が積み上がっている。在庫圧縮も引き続き課題となる。

 引き続き確実な生産、納品も求められる。早期対応によって各社は確実な納品につなげる考えだ。

〈リユースのニーズ高まる〉

 学生服業界では近年、お下がりやリユースが増えてきたとの声も多くなってきた。現在、入学者の2割がお下がり着用といわれる。フリマアプリなどの浸透で若年層を中心に中古品への抵抗感が薄まるなど、意識が変化してきたほか、制服の原材料高騰や学校別注化などによる小売価格の上昇などの影響でリユース制服へのニーズは高まりつつある。

 この動きに対応し、学生服メーカーでも明石スクールユニフォームカンパニーや菅公学生服が、学生服リユースに取り組み始めた。事業として利益を生み出し、継続できるかがポイントとなる。

〈村田堂/専門店も環境貢献に一役/学生服でごみゼロ推進〉

 少子化が加速し、地域に根差す学生服専門店の社会環境は厳しさを増す。そんな中、130年以上にわたって地元から支持され続ける専門店がある。『衣服を通じて人を育て、人を創ることにより、社会に貢献する』を理念に掲げる村田堂(京都市)だ。

 村田堂は1877年に紳士服仕立て販売店として創業。89年から学生服の製造販売を始め、京都の教育史と共に歩んできた。現在は学生服の企画・販売を主体にしながら環境経営を掲げ、繊維のリサイクル活動にも注力する。

 最近では自社で販売した学生服の回収を始めた。「second-fromプロジェクト」(学生服ごみゼロ)と銘打ち、活動している。

 同プロジェクトで回収した学生服は三つのコンセプトで再利用する。①思い出を形に:生地をオリジナル小物にアップサイクル(日本繊維機械学会の繊維リサイクル技術研究会が研究者と学生で組織した「エンウィクル」との協働)②次世代に思いを受け継ぐ:素材分別が困難な生地を色分別し、強化プラスチックに加工してキーホルダー、マグネットバーにする(カラーループとの協働)③再資源化:自動車用内装材など産業資材に再利用(ニッケ、ダイドーリミテッド、ダイトウボウとの共同によるウールリサイクルシステム「エコネットワーク」との協働)――と体制を整えた。

 「京都はCOP3(第3回気候変動枠組条約締約国会議)で京都議定書が採択された地。未来に向けて、売る責任も追求したい」と長屋博久社長は意欲を示す。