特集スクールユニフォーム(2)/探訪 学生服の現場から/ワクワクする学校を目指して/学校法人船橋学園 東葉高等学校

2025年10月22日 (水曜日)

 創立100年の歴史を持つ学校法人船橋学園東葉高等学校(千葉県船橋市)。かつては定員割れに苦しんだ時期もあったが、2017年に西村桂校長が就任して以来、劇的な変貌を遂げている。「ワクワクする学校」をビジョンに掲げ、毎年100の改革を実行。わずか数年で地域の人気校となった。その一環として制服もリニューアルしている。

〈学校全体の意識改革〉

 西村校長は就任時、「校長変わると学校変わる」と宣言し、学校が進むべき方向性を5カ年の中期ビジョンで示した。目的は教職員と生徒の意識改革だ。当時、厳しい校則で部活動に活気がなく、長い教職員会議はPDCA(計画、実行、評価、改善)やICTの活用もしていないといった状態で、「20年遅れている風土」だったと言う。

 まず、学習指導においては「進学の保証はするが脱進学校」をビジョンに盛り込んだ。有名私大への進学率を上げていくため、西村校長自ら作成したカリキュラムマネジメントを断行。授業を軸に学習に取り組む時間を増やし、生徒の自信と学力の向上を図った。

 こうした取り組みの成果は、授業評価アンケートの結果や進学実績に表れている。授業評価アンケートでは4段階評価で3・5以上得点した教員の割合が改革4年目には当初の倍に当たる53%にまで上昇。進学では国公立大学や難関私大への合格者も輩出するようになった。26年度からは希望の進路に合わせて、5日制と6日制を選択できる新たなカリキュラムも誕生する予定だ。

 改革は学習面だけでなく、生徒達がワクワクするようなイベントを西村校長自身が企画する。これまでにバリスタの世界チャンピオンを招いてのパフォーマンス鑑賞やホタル観賞会、吉本興業のお笑いライブなどを実現している。このような大胆かつユニークな改革は、生徒の満足度を高めるとともに、学校への帰属意識を育んでいるようだ。

〈100周年で制服刷新〉

 同校は今年、創立100周年を迎えている。さかのぼること5年前、この節目に合わせて全校生徒が新制服に切り替えられるよう若手教員を中心に制服検討委員会が立ち上げられた。

 西村校長は「周年の記念になるとともに、学校のイメージ刷新を象徴する制服にしてもらいたいという思いがあった。県内で最も良い制服を作るように指示しただけで、あとは若手教員の自主性に任せた」と振り返る。

 同委員会は、複数の制服メーカーによるコンペなどを経て、東京菅公学生服に依頼することを決定。1年ほどかけてデザインを固めていった。

 新制服の特徴は「選べる制服」だ。冬服は、男子の詰め襟をブレザースタイルに変更し、女子はスカートまたはスラックスを選択できるようにした。男女共にチェックのデザインにすることで統一感を出した。リボン、ネクタイも季節や気分に合わせて3種から自由に選ぶことができる。

 夏服はホワイトとネービーのポロシャツ2色と、爽やかなグレーが基調のスラックス、スカートでコーディネート。手入れの手間を考え、家庭用洗濯機で洗えるよう加工を施したマシンウオッシャブル素材を採用している。オプションとして女子はセーラーブラウスの選択も可能。リボンの色はネービーとブラウンから選択できる。防寒用としてオフホワイトのベストとセーターをそろえたところ透け防止としても人気と言う。

〈新ビジョンに向けて〉

 今年度は100周年に関連するイベントを数多く行っており、10月31日と11月1日にはその締めくくりとなる記念式典が開かれる。

 26年度からは3期目となる新5カ年ビジョンが始まる。ICTを活用した新たな学習スタイルを確立するほか、難関有名私大の合格者数増、新カリキュラム始動、英検2級全員合格などを目標に掲げ、さらなる高みを目指す。

 ICT面においては独自の教育環境を追求している点が特徴的だ。教室の黒板は既に撤廃されており、2機のプロジェクターを使った大型ホワイトボードと、生徒全員が持つiPadを“ツール”に授業を展開している。取材した日に訪れた教室で生徒に新制服についての感想を聞いたところ、38人の多様な回答がホワイトボードに即座に映し出された。集計作業も可能で、そのスピード感を実感した。

 新制服導入から約半年。国指定登録有形文化財でもある同校正門「東葉門」の前を、新制服に身を包んだ生徒が通学する光景は、新たな歴史を刻もうとする同校の象徴的な光景だろう。