特集スクールユニフォーム(5)/学生服メーカー大手3社トップインタビュー/事業環境の変化へ対応を

2025年10月22日 (水曜日)

 原材料価格など、さまざまなコストが高騰する中、学生服メーカー大手3社は、価格改定を進めてきた。これが実り、この間苦戦を強いられていた3社の利益面は改善に向かっている。ただ、コスト上昇は継続中。また、少子化も年々加速度的に進んでいるほか、制服ではお下がりやリユースなどの活用も増えつつある。取り巻く事業環境が変化する中、大手3社トップに来入学商戦の進捗(しんちょく)や今後の注力点などについて聞いた。

〈トンボ 社長 藤原 竜也 氏/事業戦略を推進〉

――2025年6月期の総括をお願いします。

 売上高は461億円(前期比6・4%増)と過去最高を達成、利益面も改善しました。その要因はモデルチェンジ(MC)校の獲得と価格改定です。今春、制服は240校以上、スクールスポーツでは260校以上の学校に採用いただきました。

 昨年8月に出店した楽天市場での販売が貢献し、電子商取引(EC)事業も大きく伸びました。

――今期の注力ポイントは。

 販売やエリア、MD、

EC事業、新規事業の各分野で事業戦略を推進しながら売り上げにつなげます。

 今月には組織体制も再編しました。メディカル、ケア向けユニフォームを取り扱うヘルスケア本部と、事業開発本部を同じグループにした市場戦略本部を立ち上げました。市場をもっと開拓していきます。

 また、これまでは販売本部が東京本社以外を管轄していました。ただ、名古屋支店と大阪支店の売り上げが大きくなってきたことから、両支店を統括する名阪統括本部も新たに作りました。

 このほか、組織人材の活性化や財務基盤の強化など、経営インフラの確立に向けても力を入れます。

――基幹システムの刷新を進めています。

 27年の稼働を目指しています。自社内に専用システムを構築して運用する従来のオンプレミス型で、システムの中身を新しくします。ただ単にシステムを入れ替えるのではなく、新しい仕組みを作っていきます。

――瀧本との業務連携の進捗(しんちょく)は。

 小学生服の定番品で材料を共通化したとともに、同じ縫製協力工場の活用も一部で始まりました。ただ、両社で制服のパターンも違いますし、やりすぎてもいけません。今後はファスナーやボタン、裏地などは共通化が進められそうです。

――来春の入学商戦に向けては。

 制服では、流通などさまざまな段階で在庫があることから昨年に比べて2~3%ほど受注量は減っています。別注は前年並みで推移しています。スクールスポーツは新規校の獲得もあり、受注は増えています。また、備蓄生産も順調に行えています。

――価格改定の進捗について。

 契約期間中で提案が伸びている物件もありますが、7割ほど終わりました。今期は9割近くまで完了する予定です。ただ、コスト上昇は続いています。以前のように5年に1回、10年に1回のような価格改定だとおぼつかない可能性もあります。

〈菅公学生服 社長 尾﨑 茂 氏/最優先は春の納入〉

――2025年7月期の総括を。

 売上高は前期比10・1%増の456億円と増収を確保しました。利益面も黒字化できました。

 当社も含め、業界全体で値上げを行ったことが売り上げ、利益面に大きく貢献しました。また、今春の生産も順調に進めることができました。

――今期の注力点は。

 引き続き、安定生産、納期厳守に注力していきます。とにかく春の納入が一番です。来春の入学商戦に向けても、新規注文の締め切りを早めに設けました。生産も順調に推移しています。

 在庫削減も注力ポイントです。社員の口からも「在庫」という言葉が出てくるようになるなど、その意識は浸透してきました。

――価格改定の状況は。

 8割ほど完了しました。ただ、その価格はその時点でのものです。この間、原材料を含めコストがどんどん上がっています。また(価格改定を)お願いしていかなければならないでしょう。

――5月に倉敷工場(岡山県倉敷市)の敷地内に新たな生産本部棟が竣工(しゅんこう)しました。

 学生服製造に関わる本部機能として新設しました。計画管理などのほか、新商品や新機能の開発、サンプル作成も一手に引き受けていきます。本稼働に向け、徐々に専用の設備も導入しています。

――保護者同士が制服や体育着を売買できるフリマサービス「ゆにのわ」の提供を本格化させています。

 全国の学校に向けて提供を始めており、今期に100校の採用を目指しています。学校側からは好評で、順調に採用が決まっています。神戸市の標準型制服におけるリユースシステムの運営パートナーにも採用が決まるなど、目標は恐らく達成できるでしょう。

――グループ会社で行う教育ソリューション事業の進捗(しんちょく)は。

 子供たちの能力育成に向けたイベントを開くほか、学校に向けても探求学習の実践プログラムを提案するなど、幅広いサポートに取り組んでいます。

――今年、日本中学校体育連盟(東京都新宿区)と、全国中学校体育大会(全中)運営に関する包括連携協定を結びました。

 運営を2年後に引き受けます。これまで地域の先生方のボランティアで成り立っていた大会ですが、これでは持続可能ではありません。協賛を募りつつ、より良い運営ができるように黒子となってお手伝いしていきます。

〈明石スクールユニフォームカンパニー 社長 河合 秀文 氏/利益確保の戦略必要〉

――今春の入学商戦、上半期(2025年1~6月)の結果はいかがでしたか。

 引き続き増加傾向にある中学校を中心としたモデルチェンジ(MC)校の獲得が前年並みに推移しました。一方、生徒減に加え、リユースの増加や通信制学校への入学者増の影響が数字に表れてきています。従来の詰め襟やセーラー服も毎年10%以上減っており、想定よりも多いです。そのため、数量的に期待した伸びではありませんでした。

――さまざまなコストが上昇しています。価格改定の進捗(しんちょく)は。

 学校にご理解いただき、想定の数字に近いところまで単価を上げることができました。契約年度もあり、次回に持ち越している物件もありますが、ほぼ理解していただける環境下にはあります。

――25年12月期の見通しは。

 目標としていた売上高325億円(前期315億円)は達成の見通しです。前期に苦戦した利益面も多少回復するでしょう。

 ただ、原材料など、さまざまなコスト上昇は続いています。単年度では回復しましたが、来年、再来年にこれをどう維持するのかという課題は残っています。利益を確保していくためにはこれからの戦略が必要。少子化の影響で全体のマスは減ってきています。増収が難しい時代にいかに減益にならないようにビジネスができるかが重要です。

――下半期の強化ポイントは。

 上半期に確保した貯金をどこまで食いつぶさずに維持できるかというところでしょう。また、来春の新入学における販売もしっかりやっていきます。

 大阪、東京、名古屋を中心に展示会も開催します。ここでは新しい企画も発表します。再来年以降の採用に結び付けていきます。

――制服のリユース、リサイクル事業の「Re―Ring AKASHI」(リリングアカシ)を今春から本格化させています。

 連携する学校で制服を回収し、クリーニング、修繕、検品、仕上げを行った後、新品よりも安価な価格で販売するものです。制服買い取り販売業者が適正な制服かどうか理解しないまま販売をするケースもある中、学生服メーカーが扱っているという安心感から採用につながっています。

 学校側としては新しい制服を着てもらいたいという思いもありますが、やはり一定数のニーズはあります。今年は採用校が100校を超える見通しです。

 事業はまだ始まったばかり。10年後にどう定着しているか、われわれにとって利益になっているか、どういう効果をもたらしているのかなど、長期スパンで見なければなりません。