特集スクールユニフォーム(8)/商社/連携深め、需要創出/チクマ/アカツキ商事/イシトコテキスタイル/牧村/ナカヒロ

2025年10月22日 (水曜日)

 中学校のモデルチェンジがほぼ一巡し、焦点は高校市場へ移りつつある。商社は暑熱対策やリユース、環境配慮といった新たな需要も生まれる中、社内外での連携や新素材開発を進め、新たな活路を見いだす。

〈チクマ/総合力発揮し商機つかむ〉

 チクマ(大阪市中央区)のキャンパス事業部は、事業部横断型の取り組みを強化する。「全社の総合力を生かす」(酒井剛キャンパス事業部長兼東京販売部長)方針の下、ビジネス分野で培ったノウハウを学生服に応用する。

 2026年の入学商戦は、シェア拡大による増収増益を目指す。中学の制服モデルチェンジ(MC)がほぼ一巡し、今後は高校MCでのシェア拡大に注力する。小学校制服市場の開拓も進め、高視認性安全服の導入校を中心に提案を続ける。

 学生服のリユース需要が高まる中、ビジネス分野で培った衣類の回収リサイクル事業「チクマノループ」や、制服管理システム「チクマノハブ」のノウハウを活用し、安心・安全なスクール向けリユース体制の構築も目指す。

 21年目となる「服育」は、継続的な取り組みが企業価値を高め、事業部間の相乗効果も生んでいる。

〈アカツキ商事/ODM、DX領域強化〉

 アカツキ商事(東京都墨田区)は、ニッケグループ内の連携を生かした縫製受託の拡大や、デジタル技術で社会を変革するDXツールの導入推進、物流体制の再構築など、来春以降の成長に向けた取り組みを加速する。

 縫製受託事業は国内の協力工場に加え、ベトナムでも展開。夏の酷暑対策で需要が高まるポロシャツなどの定番化への対応も視野に入れる。関東地域のアパレル企業とは共同縫製に続き、物流面での協業も探る。

 業務効率化も大きなテーマだ。物流面では、茨城県の物流センターへの機能集約が完了し、現在は大阪からの移管を段階的に進めている。DXは、ECシステム「ニッケメイト」の導入校が200校を突破。さらに、ITベンダー企業との協業でマニュアル生成AI(人工知能)を活用した自動応答システムを学校に提案し、校内業務の効率化を後押ししていく。

〈イシトコテキスタイル/持続的な開発で市場深耕〉

 イシトコテキスタイル(大阪市中央区)は、学生服分野で高まる暑熱対策や編み地のニーズを捉え、将来を見据えた商品開発を強化している。「インナーからアウターまでワンストップで提案できる」強みを生かし、顧客の要望に応じた素材提案を通じ市場を深耕する。

 暑熱対策では、夏に特化した見本帳「盛夏向きセレクト」を新たに作成し、提案力を高めた。シキボウの特殊高通気織物「S(エス)クール」や、ドット構造による高通気編み地「エアモーション」など、夏を快適に過ごすための素材を幅広く収録する。

 シキボウの特殊な糸使いと編み組織で汗染みを抑える「スエットコントロール」の開発も進めており、機能の多様化を図る。今後も盛夏向け素材を拡充し、学校現場の需要を取り込む。

〈牧村/拠点連携で開発強化〉

 牧村(大阪市中央区)のスクールユニフォーム事業は、全国の営業拠点と連携した素材開発を強化している。来月には新たな社内システムを導入し、営業所間の情報共有を密にする。市場ニーズを迅速に捉え、在庫管理や生産管理、開発、QR対応の精度を向上させる。

 2026年入学商戦は、アパレルメーカーの在庫調整が続き、需要の回復は想定を下回る見通しだ。今後は高校のモデルチェンジを見据え、中学校との差別化を狙い、無地ながらスーツ地のような意匠性を持たせた生地や新柄の開発を進める。コスト上昇を抑えるため、ウール混率を10~15%に抑えた素材開発にも取り組む。

 開発は、全国7営業所の若手が中心となり、拠点間で連携しながら共通柄を軸に進めている。新システムの導入で在庫や生産の情報を一元管理し、精度の高いモノ作りとコスト対応力の強化につなげる。

〈ナカヒロ/攻めと守りを明確化〉

 ナカヒロ(大阪市中央区)は、「攻めと守り」(髙橋雅彦関西スクール部長兼スクール業務部長)を明確にすることで効率化を図る。営業体制の強化と独自の環境配慮型素材「エコサス」の本格展開で、新たな商機を捉える。

 営業担当者が提案活動に専念できるよう、業務部を増員し、生産管理と営業の機能を分離した。今後は地域密着型の学生服メーカーや販売店との連携を一層深め、本格化が見込まれる高校の制服モデルチェンジ案件の獲得を狙う。

 環境配慮への取り組みも加速させる。これまでビジネス向けに展開していたエコサスで学販向けの提案を始めた。9月には大阪でエコサスの内見会を開き、ニッケの衣料循環プロジェクト「WAONAS」(ワヲナス)と協力した衣料品廃棄ゼロを目指す循環制服や、エコサス生地の売り上げの2%を日本赤十字社の活動資金として寄付する仕組みを提案した。