香港大手トップに聞く~混迷時代の勝ち筋~③/互太紡織 奥富勝会長

2025年10月23日 (木曜日)

生産と素材双方を高度化

  ――(東レが出資する丸編み地大手の)互太紡織(パシフィック・テキスタイルズ・ホールディングス)の2025年3月期業績は。

 前期比増収でした。米国市場が好調で、特に量販・電子商取引(EC)向け受注が伸びました。利益はベトナム工場が台風被害を受けたことが響き、ほぼ前年並みでした。

  ――市場・アイテム別売り上げ構成比は。

 日本向け50%超、米国向け約30%、中国内販10%弱、残りが欧州向けです。アイテム別ではアウター6割、インナー4割。従来インナー比率が高かったのですが、近年アウター用途が増えました。

  ――新規で取り組む非アパレル事業は。

 中国大手ホテルチェーン向けにベッドシーツや枕カバー用途の素材を供給しています。丸編み・経編み双方が成長中です。車両資材の経編み地の取り組みも始めました。

 ――生産体制の詳細を。

 中国・広東省番禺工場と、ベトナム・ハイズオン(旧工場)およびナムディン(新工場)の3拠点体制です。旧工場は15年に稼働、新工場は24年に量産を始めました。生産比率は今期、中国67%、ベトナム33%になります。ベトナム比率が高まっています。

 ――ベトナム工場は日本向け中心ですね。

 旧工場は日本向けがいまだにメインですが、新工場は欧米向けも拡大し、3割を占めます。

 新工場には東レ出身の副社長と技術者が駐在しています。高付加価値な合繊素材を展開し、販売単価がグループ平均よりも1割ほど高いです。最新設備を導入し、省人化と品質安定を実現しています。経編み生産ラインの稼働も計画中です。

  ――米国・相互関税の影響は。

 ベトナム生産が大きな影響を受けました。4~6月期は相互関税問題で発注が減少し、稼働率が50~60%に落ち込みました。7月以降、関税率が確定したことでオーダーが戻り、8月には旧工場が100%、新工場が80%まで回復しました。

  ――中国工場の現状は。

 素材開発に注力しつつ、地場スポーツ・アウトドア向けの内販を拡大中です。東レグループの糸を使った機能性編み物を供給しています。差別化素材比率は33%に達しています。工場のデジタル化・自動化も進めています。

  ――素材開発の方向性は。

 機能性と高級感を両立させた生地を開発しています。東レ素材の使用率は約4割に高まっています。

  ――今期(26年3月期)の見通しは。

 第1四半期(4~6月)は相互関税で厳しかったものの、7月以降は回復傾向にあります。通期で売上高・純利益とも前年を上回りたい。

 中国・ベトナム両工場で自動化と省エネ化を進め、生産効率を高めると同時に、環境負荷低減にも取り組みます。

(香港=岩下祐一)