「TITAS」 関係者インタビュー(上)/紡拓会 黄偉基秘書長
2025年10月23日 (木曜日)
EU規制強化を好機に
14~16日に台湾・台北市で開かれた「第29回台北紡織展」(TITAS)では、大手出展者が最新のサステイナブル素材やデジタル製品パスポート(DPP)を訴求した。背景には欧州連合(EU)の環境規制強化がある。本連載では、同展関係者に規制強化の影響などを聞く。第1回は、主催者、紡拓会の黄偉基秘書長。
(台北=岩下祐一)
――EUで環境規制強化が続いています。
来年から大手企業に「在庫の公開」が義務付けられます。ブランドや小売業者にとって大きなプレッシャーです。過剰在庫が廃棄物と同等に扱われ、企業の財務報告書に記載が義務付けられます。財務に直接的な打撃を与えるため、ブランド各社は発注をこれまで以上に慎重にならざるを得ません。サプライチェーン全体で、より正確な需要予測と生産管理が求められるようになるでしょう。
――EUでのリサイクル能力の限界も深刻な課題です。
年間750万㌧もの繊維廃棄物が発生しているにもかかわらず、現在のEUのリサイクル設備では到底処理しきれない。新たな法規制や消費者の行動変容を促すインセンティブが議論されていますが、最終決定はまだ。産業界と消費者が直面する大きな課題です。EU各国の国内法整備も統一されておらず、状況を一層難しくしています。
――アジアではどのような動きが?
世界第3位の衣類輸入国である日本は、経済産業省が2030年までに循環経済に対応する繊維産業の規制導入を発表するようです。われわれが注目しているのは、日本の規制がEUとは異なり、リサイクル技術の研究開発への投資を奨励する方向にある点です。東レや帝人といった業界リーダーが、国内でのリサイクルを主導していくとみています。来月、日本の業界リーダーと会談し、具体的な進捗(しんちょく)について伺う予定です。
――こうした変革期に、台湾のサプライヤーが世界のブランドから注目されています。
台湾のサプライヤーが、サステを核としたイノベーションを生み出しているからです。今回展の出展者も、省エネやコスト削減を実現しつつ、より効率的なソリューションを提供しようと競っていました。
――具体的事例は。
例えば、エレクトロニクス大手、BenQグループ傘下の明基材料(BenQマテリアルズ)は、有害なフッ素化合物(PFC)不使用のディスプレーをリサイクルした透湿防水素材を開発しました。これは、台湾独自の産業基盤が繊維産業の革新を後押しする好例です。遠東新世紀(ファーイースタン・ニューセンチュリー)は、工場排気ガス由来のポリエステル「TOPGREEN Bio3」(トップグリーン・バイオ3)を出展し、注目を集めました。こうしたイノベーションが、世界中のブランドを台湾に引き付けるのです。





